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「隠したい」「書きたくない」と思うようなことから書く

岸田 MVやジャケットで見ると、彩織さんはバンドのメンバーに囲まれてあんなにハッピーそうに見えているじゃないですか。エッセイを読むとその内側がこんなにごちゃごちゃになっていたんだと知れて、すごく安心します。なんだ、彩織さんもひとりの人じゃん! 私たちと同じかあ、と思えて。誰に頼まれたわけでもないのに、何で彩織さんは文章でここまで自分を晒してくれるんですか?

藤崎 SEKAI NO OWARIのSaoriとしての人格ばかりに光が当たってきたので、自分はそれだけじゃない、別の自分もあってそっちも出していきたいという欲求があったのは大きいです。だったら、キラキラしたSEKAI NO OWARIのSaoriの話だけ書いてもおもしろくないだろうと思って、自分はこんなふうにつらかった、でもこうやって乗り越えようとしたよ、という過程を包み隠さず書きました。私も人のエッセイを読む時は、キラキラより「隠したい」と思うような感情の方を読みたいです。だからふつうなら「隠したい」「書きたくない」と思うようなことから書こう、そのほうが人に伝わるだろうし共感してもらえると信じてやってます。

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書いたものの中にいる自分のほうが好き

岸田 書きたくないことをこそ書く決意って、いいですね。彩織さんは「書かざるを得ない人」であって、書いていくことはもう宿命なのかも。

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藤崎 書くことが自分に向いてるなとは思います。話し言葉だとその瞬間に考えていることしか出てこないけど、書き言葉はじっくり冷静に考えたうえで発せられて、自分の「本当」に近い気がする。書いたものの中にいる私のほうが多少性格がいい気もするので、そっちの自分のほうが好きかもしれないですね。

岸田 私はバンドの「Saori」のほうの彩織さんも、本の中の彩織さんもどっちも大好き。『ねじねじ録』を読んだ人は、みんなそうなるんじゃないかなと思います。これから久しぶりの全国ツアーも始まるんですよね? 私の住んでいる大阪に来たときは、家族で観に行きますね!

ねじねじ録

藤崎彩織

水鈴社

2021年7月30日 発売