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脱サラしたラッパー・DOTAMAが語る“ヒップホップ”と人生。メガネにスーツの格好を続ける理由

ラッパー・DOTAMAインタビュー

2021/12/07
note

働くやりがいは必ず存在する

——『リストラクション~自主解雇のススメ~』や『社会人』など働く人の立場に立った作品を多くリリースしていますね。

DOTAMA そうですね。例えば、レーベル独立後、『社会人』というアルバムをリリースさせてもらいました。そのアルバムは社会の人、つまり自分も含めて社会で暮らす全ての人々に楽しんでもらえるような楽曲を、というテーマで制作させてもらいました。お仕事あるあるソングというか。もちろん、働くというのは楽しいことばかりじゃない。それでもやりがいを探して働いてみよう、という労働におけるリアルを描いたメッセージソングです。

 

 働くということは、ストレスや人間関係のジレンマなど、永遠の課題があるかもしれませんが、必ずやりがいは存在すると思うんです。「働きたくねえ。働くのなんて嫌に決まってる。誰もがみんなそう思ってる」っていう考えもものすごく分かるし、職場に中指を立てたくなったことは自分もあります(笑)。ただ、どこかで落としどころがあるはずだとも思う。

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 個人的には働くことで人生は豊かになると思ってるタイプです。雇われる側と雇う側。両者が幸せであることが一番で、愚痴を言い合うのではなく、お互いのプラスになるポイントを探そうというメッセージを伝えたくて。このアルバムに収録した楽曲「働き方改革」は特に、サラリーマンとして働いていなかったら歌えなかったかもしれません。

「本気で音楽好きなんだったら会社辞めなよ」

——ホームセンターで働いていた10年間がDOTAMAさんの音楽を作っているんですね。

DOTAMA そうです。ただ、そんな偉そうなことを言いながらも、僕が10年勤めた職場を選んだ最初の理由は、実家から近いという理由でした(笑)。ほぼ勢いというか。逆にそういった理由で就職したことが、仕事に対するフラットな気持ちを生んで、いつでも勉強しよう、という音楽への探求心にも繋がっているのかもしれません。 

——ペットが好きだったとか園芸が好きだったというのはあったんですか?

DOTAMA 猫も飼っていましたし、両親の実家にも畑があって農作業を手伝ったことがあったので、普通に好きでした。でも勤めてからはいっそう勉強させてもらって。やっていくうちにさらに魅力を感じるようになった気がします。そういった知識が今、音楽制作に役立っているかと訊かれたら怪しいのですが(笑)。

 サラリーマン7年目くらいのときに、当時の職場の同僚に「本気で音楽好きなんだったら会社辞めなよ。なんで音楽だけに絞らないの?」って言われて。人間、目標や夢、やりたいことがあると「好きなことしかしたくない」「やりたいことだけやる」という発想はあるじゃないですか。「無駄な時間を過ごすな」みたいな。