もちろんそれは大事で間違いない。好きなことにまっすぐ進んでいくべきです。その点、僕の人生を振り返ってみると、あまりにも無駄が多すぎたというか(笑)。いろんな回り道をして、時間を浪費して…と言ったら怒られちゃうけど。でも振り返ると、そんな20代の生活や、培った知識が、今の自分を支えていると思います。やりたいことは一つでなくてもいいし、最短距離でいかなくても大丈夫。いろんな回り道が人生を豊かにすることもあると、自分の経験則からは思います。
HIPHOP=ワル、ワルじゃないという議論
——たしかにコスパを求められる時代で悩む方も多いですよね。
DOTAMA そうですね。無駄なことはせず、時間を節約し、手間もカットすることこそ賢い。それは間違いないと思います。コスパの向上は確実に、人生に有意義な時間をもたらしてくれる。問題はその浮いた時間やお金で、どれだけ無駄なことに情熱を注げるか。そして形に出来るかですかね。
——DOTAMAさんのようなスタイルのラッパーは珍しいような気がします。見た目もいわゆるラッパーとは違いますし。
DOTAMA そうかもしれません。ただ誤解しないでもらいたいのですが、ヒップホップ=ワルそう、とかヒップホップ=ワルじゃない、みたいな議論はナンセンスで。自分の人生を歌うことこそがヒップホップです。どんな生まれでも、生い立ちや生活環境でも、リリックを書き出したらその人はラッパーで、ステージで歌う曲はヒップホップだと思います。
カッケー!と言ってもらえるような音楽を作りたい
大げさかもしれませんが、全ての人間を包み込んでくれる文化。そんな懐の広いヒップホップに自分は救われましたし、大好きなんです。コロナ禍で日本は大変な局面を迎えています。生活の変化から来るストレスへの、暴力的な衝動を乗せることもラップは出来る。人生における出来事への気持ちを歌えるからです。そういった負の感情を音楽表現に昇華するのもアリだと思うし、笑い飛ばせるようなポジティブな楽曲にするのもアリです。
それこそがヒップホップという文化の奥深さで。自分も現実を見据えつつも、聴いていただく方に楽しんでもらえるようなヒップホップを歌っていきたいと思っています。
——そういう意味でDOTAMAさんの存在というのはすごく大きいですよね。
DOTAMA ありがとうございます。堅苦しいことを長々と話しましたが、本心は何も考えずにでも楽しんでもらえる、カッケー!と言ってもらえるような音楽を作りたいです。
写真=山元茂樹/文藝春秋