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 コーチや監督が体のあちこちを触って作戦を伝えるブロックサインってありますよね。あれって複雑そうに見えてそうでもないんです。オーソドックスなのが場所と順番を決めておくもの。例えば、肩が盗塁、頭がバントなどと決めておき、「今日は帽子を触った後に触ったところ」としておけば、コーチは帽子の次に頭を触ってバントのサインを出すのです。コツさえつかめばわかりやすいのですが、日本ハム時代の近藤貞雄監督はとんでもないサインを考えました。

中日ドラゴンズ時代の大島康徳氏 ©文藝春秋

 足し算引き算なんですよ。肩から上に手が挙がったら足し算、肩から下なら引き算。これにはホント、参りました。

 例えば、右手で3本の指をつくって上に挙げます。その後、下に2本の指を出す。すると、3引く2で1になる。事前に「今日は1がバントだぞ」と決めておくのですが、これを連続で5-5+3-2+1とか出されると、「あれ、ちょっと待てよ」ってわからなくなるんですよ。試合中ですからね。外国人なんて「オーノー!」って頭抱えてましたよ。

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 プロ野球では昔からサインを盗まれないようにするために、対抗手段を考えてきました。この足し算引き算、画期的といえば画期的でしたが、味方がわからなければ意味がないですよね。選手から文句が出て、すぐになくなりました。

 野球も人生もシンプルが一番です。

後輩たちへ

 野球でシンプルに考えるとはどういうことか。ここでプロ野球の後輩たちに向けて書きましょう。特に僕がお世話になった中日と日本ハムの選手たちに読んでもらいたいなと思っています。

 選手たちは一生懸命やってますよね。オフもないくらい練習もしています。ただ、意気込みを聞くと、「レギュラーを獲る」「一年間一軍にいる」しか出てこない。それが寂しいんです。

 そんなのは誰もが思っていることなんですよ。そんなんじゃない。俺の良さはこうだから、これを絶対に認めさせてやるぞと、そういう感じで自分を磨いていかないと。地元のスーパースターで満足している選手はいらないんです。

 少し厳しいことを言いますね。

 どちらの選手も恵まれているんです。給料の面でも、町中を歩いても、いろんなことしても恵まれてますよ。そこに甘えはないと言いながら、名古屋地区と北海道地区の選手に対するリスペクトがすごすぎて、自分たちに甘くなっている。そんなふうに見えます。