選手としても指導者としても輝かしい成績を残したプロ野球選手大島康徳氏が、がんでこの世を去ったのは2021年6月30日のことだった。

 ここでは、病魔に冒されながらも、常に前を向き、“生ききった”同氏が遺した文章をまとめた『振りきった、生ききった「一発長打の大島くん」の負くっか人生』(東京新聞)の一部を抜粋。闘病生活の中、後輩へ、そして家族へ向けて書き留めた思いを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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中傷

 2017年2月、僕は自分のブログで「大腸がんのステージ4」と宣告されたことを明かしました。自分が予想するより多くの反響があり、戸惑ったことを覚えています。

 実は家族からは反対されました。「応援してくれる人ばかりじゃないよ。誹謗中傷とか、悪意ある反応もあるよ」。それでも僕は公表することにしました。

 がんになることは悪いことなの?

 隠さなければいけないことなの?

 そう思ったからです。

 がんになったからといって、僕は何も変わっていません。僕は僕です。大島です。うつむいたり、引きこもって生きるのは嫌でした。

 皆さん、がんという病気を特別視しすぎていませんか? 病気って生きていれば必ずかかるものじゃないですか。誰だって風邪をひいたり、腹痛になりますよね。でも、うまく付き合いながら、生活していますよね。がんも同じです。病気とうまく折り合いを付けて生きていくのが普通のことだと思うのです。

 以前も伝えましたが、健康な人は善で、がん患者は悪というのは偏見です。間違ったイメージです。それを少しでも直したい、がんへの正しい知識を身に付けてもらいたい。それが僕がブログにがんの話を書く理由であり、ここで記す理由です。僕の考えをわかってもらえるとありがたいです。

自宅のパソコンでブログを更新する(同書より)

 ブログには連日のように読者からの書き込みがあります。励みになりますが、中には残念ながら、見なければよかったというものもあります。

「草葉の陰から応援しています!」「ご自身の病気の心配をしてください。今年の梅雨をじっくり味わってください」。どうしてそこまで書くのでしょう。

 現役時代、やじられるのに慣れている僕でも、不安になります。妻も家族も傷ついています。言葉で人を傷つけるのは本当にやめていただきたい。がん患者だって一生懸命生きているのです。