文春オンライン

“一発長打”で愛された大島康徳が死の直前に後輩へ宛てた知られざるメッセージ「少し厳しいことを言いますね…」

『振りきった、生ききった「一発長打の大島くん」の負くっか人生』より #2

2021/10/16
note

 プロ野球では「他人のせいにできる監督は一流だ」という格言があります。他人のせいにして忘れるというのは無責任ですが、名言ではありますよね。

「忘れ上手は生き方上手」といいます。一打席一打席、新たな気持ちで臨むように、いいことも悪いことも、がんになったことさえもこだわらずに、一瞬一瞬を生きていけたらと思うのです。

QOL

「QOL」という言葉を知っていますか? Quality of Life(クオリティー・オブ・ライフ)の略で「人生の質」「生活の質」と訳されることが多いようです。考えてみれば、僕はがんになってから、このQOLにこだわって生きてきたように思えます。

ADVERTISEMENT

 人生の目的って何だろう。

 QOLを知って、考えたことがありました。出世? それとも、お金儲もうけ? どちらも不正解ではありません。考え方は人それぞれですから。でも、僕は「良き理解者に巡り合えるかどうか」ではないかと思っています。

 良き理解者といえば、僕の場合は家族です。人によっては友人や両親、上司や同僚という方もいるでしょう。いずれにしても、自分という人間を知って、受け入れてくれる人と出会うことができるかどうかではないかと思います。

 大島家はよくけんかをします。妻とは3日間も口をきかないことがあります。僕の性格上、素直に「ごめんなさい」とは言えないんですね。

 そんなときでも、家族は理解してくれているので、何かの拍子にパッと元に戻れるんです。余計な言葉はいりません。そういうことが幸せだと思うのです。僕は自分の家族が大好きです。

何年生きたかより、どうやって生きたか

 妻の奈保美さんへ。照れくさいので本人の前では言えませんが、いつまでもそばにいてもらいたい人です。

 長男へ。昔は怒ってばかりでしたが、最近はしっかりしてきましたね。頼もしい。次男へ。泣き虫だからまだ心配かな。でも、頑張り屋さんです。3人とも自慢の家族です。僕はこの家族に出会えて本当に幸せでした。

 僕だって将来を考えるのは怖いです。でも、終わりを予測して心配するのに意味はないんです。だったら、自分を理解してくれる人たちと一緒に、今ある毎日のことを自分らしくやっておけば、それでいいんじゃないかと思うのです。

 何年生きたかより、どうやって生きたかが大事だと思うのです。

【前編を読む】「まねできない」「こいつはすごいやつだ」大島康徳が明かした落合博満の異常ともいえる“野球への向き合い方”

“一発長打”で愛された大島康徳が死の直前に後輩へ宛てた知られざるメッセージ「少し厳しいことを言いますね…」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー