中国の感染症の予防と管理に関する法律には、「感染症が爆発した際、必要な場合は感染した動物を殺処分する緊急措置を取ることができる」と記載されている。
「猫ちゃんたちはもう死んでしまった」
「猫を助けてほしい」という悲痛な訴えをSNSに投稿してから約8時間後、女性が再びメッセージを投稿した。
「猫ちゃんたちはもう死んでしまった。皆さんありがとう。誰かを追及するつもりはありません。小さな猫たちに生きる道を見つけてあげたかったのですが、私たちにチャンスは与えられませんでした。地域の人はみんないい人たち、国のために頑張っているだけです。現在の状況では、国と人々の安全が最優先です。我々感染者の気持ちは感染者しか理解できません。我々も周りに迷惑かけたくないです。健康が最も重要です。私はただウィルスにやられた免疫力の弱い普通の人です…」
“ウィズコロナ”と“ゼロコロナ”の違いがもたらすもの
中国のSNSでは今回の件に関して、「感染拡大を防ぐためには仕方がない」という意見がある一方で、「文明社会ならできる範囲で命を尊重する必要がある」という意見もあった。また、「本当に猫が新型コロナウイルスに感染していたのか?」という疑問の声もある。
日本やヨーロッパなどが“ウィズコロナ”政策をとっているのに対して、中国は“ゼロコロナ”政策を推し進めている。その結果として数年間一緒に過ごしていたペットが殺処分された。一部の研究では、飼い主が感染した場合、ペットも感染することは珍しくないとされている。
ただ、人から動物への感染は確認されているものの、ペットから飼い主への感染を示す証拠はまだ確認されていないという。このため、実際に感染したペットを殺処分するほど厳しい対応が必要なのかは、感染対策をどこまで徹底するかにかかっていると言えるだろう。
中国の場合は、「国は人を救うために全力を尽くしている」とされ、ペットも“ゼロコロナ”の例外ではないことがわかる。3匹の猫を殺処分された女性も悲しみながらも「現在の状況では、国と人々の安全が最優先だと思う」と受け入れている。
それでは日本で同じような状況になった場合はどうなるのか。東京都福祉保健局の担当者は「ペットに対する考え方は国によって違う」とした上で、東京都の場合は、「新型コロナウイルスの感染に関わらず、基本は普段から飼い主に何かあった時にペットを預かってもらえる場所や人を確保しておいてほしいが、どうしようもない時は東京都の動物愛護センターで預かります。」と話す。そして、「中国のように殺処分することはあり得るか?」という質問に対して、「そのような対応は現時点ではない。」と話した。
【執筆:FNN北京支局 河村忠徳】
【猫の画像:中国SNSより】