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経済的困難への共感、韓国ならではの「異国情緒」

「ゲームに参加する、カネに困った崖っぷちの人々と、ゲームを主催したカネ持ちの“持てる者”の側すべてに共通する『欲望』と『人間の本能』、これは世界の人々に共通するものではないでしょうか。また、世界的にコロナ禍で経済的に苦しんでいる人が多いことも共感を呼んでいる理由だと思います。

 そして、デスゲームは日本や米国などでもお馴染みのコンテンツで入り込みやすい。ストーリーも事情を抱えたさまざまな境遇の人々が一攫千金をめざし命を懸けて賞金を狙うという、いたってシンプルなものですが、作品としてはヒューマンドラマに仕上がっているところが単なるデスゲームと一線を画しています。

主役のひとり、パク・ヘス。『刑務所のルールブック』(2017年)で一躍スターダムを駆け上がった ©getty

 グローバルな普遍性に加え、韓国ならではのローカル色も人気の秘訣だと思います。たとえば、韓国に伝わる子どもの遊びや参加者が着るジャージは異国的なものとして大ウケしました。これほどまでの人気になったのはそんな要素がうまく組み合わさった作品だからだと思います」

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 劇中に登場する韓国の伝統的な遊び「型抜きカルメ焼き」は各国でさまざまなパロディが誕生しており、カルメ焼きを作るセットは通販サイト「イーベイ」などに登場し高値で売れているという。

 韓国でも、『イカゲーム』体験ゾーンが地下鉄駅構内に登場するなど(人が殺到し密になると8日間で撤去された)人気の一方で、「食傷気味のストーリー」や「女性嫌悪だ」という酷評も飛び交った。

他作品と異なるのは、“負け組”の話であること

 日本のデスゲームものの映画『神様の言うとおり』や『カイジ』シリーズ、米映画『ハンガー・ゲーム』との類似性を挙げ、「剽窃だ」という人もいた。こうした指摘に対してファン監督はこう答えている。

「2008年に作品(『イカゲーム』)を構想した時期は私が経済的にしんどい頃で、ほとんど漫画喫茶で暮らしていたような頃でした。その時に(日本の)『ライアーゲーム』や『賭博黙示録カイジ』も読んだし、米映画『ハンガー・ゲーム』も見ました。

 そこに出てくるのは、借金を抱えていたり経済的に追いこまれている人たちをカネを賭けたゲームに参加させるもので、そこから『イカゲーム』を思いついた」(京郷新聞、10月2日)

 ただ、そうした他作品と異なるのは、「人が見える作品である」ことと、「他の作品は…(中略)…ひとりの英雄を全面に出して勝者になる過程を描いているが『イカゲーム』はいわゆる世間が言う“負け組”の話で、(難解なミッションを解く)天才も英雄もいない」(韓国経済新聞、10月1日)ことだと語っている。