ドラマで使われた電話番号が実際に存在
また、ドラマに登場する女性が性的対象物として繰り返し描かれているとして「女性嫌悪的だ」という声が上がり、批判された。韓国紙の記者(30代女性)は言う。
「特にジェンダー問題に敏感だとされる20~30代の中には、『見る価値なし』と酷評する人も多いですね。女性が自らの性を利用したり、弱い者として描かれているシーンもあり、見過ごせないとする人が多く見受けられました」
他にもドラマで使われた電話番号が実際に存在しており、電話番号の持ち主が、「参加したいという電話だけで2000件も超えてかかってきており、仕事にならない」(マネートゥデイ、9月24日)と被害を訴え、騒ぎにもなった。
また、ゲームに参加した人が賞金を狙うその背景にもれなく「家族」がついてくることや、結末などが韓国ドラマにありがちで陳腐なものだという声も聞かれた。
主人公は、自動車工場に勤めていた平凡な技術者だったのが、不況のあおりで突然解雇の憂き目に遭い、事業に失敗してあっという間に中産層から低所得層へ転落した人物という設定だ。
これは、実際、2009年に起きた「双竜自動車工場争議」がモチーフになっているといわれる。この事件は、双竜自動車労組などが2カ月間ほどストライキを続け、警察の機動隊などの投入により多数の負傷者を出したもの。騒動が収拾した後も自死者が出るなど、悲劇的な事件として知られるが、視聴者の中には既視感のあるこうした物語も食傷ぎみだという人もいた。
殺伐さが馴染む世の中になったのか
韓国的素材が詰まった同ドラマが世界でこれほど人気な理由が最初はよく分からなかったという50代の会社員はこんなことを言っていた。
「結局、韓国で起きていることが特別なことではなく、世界でも共感を呼ぶ時代になったのだなあと思いました。ドラマで印象に残ったのは、デスゲームの主催者がゲームの中ではみな“平等”だと語ったシーンです。もちろん、詭弁なのですが、世界で民主主義が“ゾンビ民主主義”といわれるように、公正さなんていうものが無視されている現実も、ドラマの人気の背景にあるのではないかなあと思ったりしました」
『イカゲーム』は、ファン監督が脚本を売り込んだ2008年頃には「内容が殺伐としていて馴染まない」と断られたという。今はそんな殺伐さが馴染む世の中になったということなのだろうか。