「へそのそうじはすべきでない、という医師はいます。理由は“おなかが痛くなるから”なのですが、そうじしないでいると垢がたまるだけなので、においの温床になるのも事実です。私は『痛くならないようにそうじする』ことを推奨しています」(太田医師、以下同)
へそを触るとなぜおなかが痛くなるのか
胎児期の赤ちゃんがお母さんから栄養の供給を受けるために存在する「へその緒」。生れ出て肺呼吸が始まればへその緒は不要となり、血流が途絶えて脱落する。「おへそ」はその脱落した痕跡だ。
「周囲と異なり、へその奥はクッションになる皮下組織が薄く、皮膚と腹膜とがほぼ表裏一体となっている。しかもその周囲には神経や血管が走っている。汚い指で腹膜をいじれば、その刺激で痛みが起きても不思議ではない。だから『へそをいじるな』という医師の意見は一理あるのです」
じつは手術での「へその利用」が進んでいる
近年、外科手術の手技として腹腔鏡手術やロボット手術の導入が進んでいるが、その際におへそはよく利用される。腹膜一枚張っているだけなので簡単に腹腔鏡を挿入できるうえ、おへそそのものには神経も血管もないので安全だ。お腹の表面に開ける穴を一つ減らすことができるので、審美面でも優れている。最近では「単孔式」といって、へその穴だけを利用して胆石や胆のうポリープ、大腸がんなどを腹腔鏡で切除する手術を行う医師も出てきているほどだ。
おへそを利用する手術の前には、衛生上の理由から「そうじ」が行われる。
「へその形状は個人差があり、完全に蓋をするように閉じられている人もいれば、少し内部が見える人、あるいは妊婦や肥満の人などはお腹の圧力で押されてへそが裏返しになる“でべそ”の状態になる人もいる。完全に蓋がされていればそうでもないけれど、内部が見えるような形状の人は、ごま(垢)のにおいが洩れてくることがあります」