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和解期日を設けても遺族との面談を拒み続け

 控訴審では、結審後、長谷川裁判長が和解を勧告した。何度も和解期日を設けていたが、道側は遺族と話し合いのテーブルにつくことはなかった。道教委は、不適切とされた指導内容を検証することに否定的だ。遺族は今年7月、道教委あてに、認識を問う要望書を提出。改めて面談を要望した。道教委は8月20日、「当方の主張が認められたものと考えておりますが、判決については厳粛に受け止めています」などと回答。その上で、遺族との面談を拒んだ。

 遺族側は道教委の回答を「事実上の無回答」として、8月31日、鈴木直道・道知事との面会を求める要望書を提出しようとしたが、「(要望書の)窓口は道教委」と言われたため、要望書の提出を断念した。その後、道議会文教委員会で、旭川市のいじめ凍死事件とともに、この問題が取り上げられた。こうした点を踏まえ、道教委は方針を一転。9月24日、生徒指導・学校安全課長と遺族が面談することになった。

通っていた北海道道立高校 ©️渋井哲也

 遺族との面談について、筆者の取材に対して、道教委は課長補佐が対応した。

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「道教委としては当初、遺族の要望書に回答をすればいいと思い、面談を遠慮させていただきました。しかし、要望書の回答後、遺族が知事部局に訴えたこと、道議会文教委員会でも質問があったこと、他にもいろいろな方からの話があったこと。それらを考慮して、遺族とお会いして、もう一度、こちらの考えを伝えた方がいいと思いました」

 道教委は、悠太さんの自殺前日の指導をめぐる見解を変えていない。遺族と面談したものの、「裁判を通じて道教委の考えを伝えている」との回答に終始したという。

「同じことを繰り返してほしくない」という遺族の思い

「『裁判で争った点はすべて適切か?』という問いに対してですが、結論からいくとそうなります」(課長補佐)

 道教委が認識を変えないということは、同様な指導が行われたとしても、「適切」との判断になり、同じ遺族対応を繰り返すと思われてもしかたがない。

「今後の、教員によるハラスメントによる自殺の予防についても無回答でした」(遺族)

仏壇に向かう遺族 ©️渋井哲也

 遺族は「息子と同じ子どもがでることを繰り返してほしくない」と話し、道教委との接点を探している。同じように児童生徒の自殺があった場合、いじめ問題だけでなく、教師の不適切な指導についても十分な検証をしてほしいとの願いもある。そのため、検証や再発防止に関する話し合いを続けることになった。次回の面談は10月末だ。

 生徒指導をめぐっては、基本書である「提要」は策定されてから10年が経ち、スマートフォンやSNSの普及、発達障害とされる児童生徒の増加、児童生徒の自殺が増加しているとして、文科省は「今年度中に改訂」(初等中等教育局児童生徒課)しようとしている。