教師の不適切な指導をきっかけとした自殺「指導死」
教師の不適切な指導をきっかけとした自殺は、「指導死」と呼ばれることがある。遺族である大貫隆志氏(指導死親の会・共同代表)の造語で、不適切な、教員による説諭・叱責・懲戒などの指導によって、児童生徒が精神的に追い詰められて死に至ることを指す。
例えば、「飴を舐めたことで反省文を書かせ、かつ全校集会で決意表明を求められていた」、「長時間拘束したり、証拠のないままにカンニングを疑い追い詰めた」、「ライターを友人に見せていたことを理由に指導。タバコを吸っていたことを疑われたと同時に、友人を告発するように言われた」、「いじめを疑われ、執拗な指導を繰り返された」など。不登校や自殺未遂となったケースもある。
「文科省としても、きっかけが生徒指導だったと指摘されている児童生徒の自殺があることは認識しています。この問題は(提要の)各項目にわたって横断的に関わってきます。子どもの心理を考慮しつつ指導をすることに関しては、総論の部分でも検討することになります」(児童生徒課)
「再発防止対策検討委員会」を立ち上げた鹿児島県奄美市のケース
調査委の調査が終わった後、遺族と教委が再発防止を求めたケースがある。2015年11月4日、鹿児島県奄美市の市立中学校1年だった男子生徒(享年13)が自宅のベランダで首をつった。その日、男子生徒は学校で担任から指導を受けていた。帰宅後も担任が家を訪ねてきた。玄関先で、二人で話した後の自殺だった。自宅は学校から近く、ベランダは校舎を見ることができる場所だった。
調査報告書によると、11月2日、同級生が欠席した。担任が母親に電話をすると、「友達に嫌がらせを受けている」と告げた。4日に同級生が登校したとき、担任が紙を渡し、「された嫌なことを書くように」と言った。担任は、同級生の書いたことをもとに聞き取りをした。そのメモには、男子生徒の名前は嫌がらせ行為の主体ではなく、別の子の箇所に名前が挿入される形で書かれており、一緒にいただけのようになっていた。
担任は、男子生徒にも指導するため、放課後に残るように言った。「なんで俺が呼ばれるのか?」と不満げだった。聞き取りで、ある方言を言ったことを認めているが、時代によって表現が変わる若者言葉だが、誤解された可能性があったため、「これからも仲良く遊びましょう」と謝罪した。その後、担任はさらに指導。担任が家庭訪問したのは約1時間後だ。その後、男子生徒が自殺した。