遺族は、市に対し、調査委の設置を要望。18年12月、調査委は報告書を作成。発表した。「自殺した当日の指導と家庭訪問時の対応が不適切であり、男子生徒を追い詰めたことは明らか」と、教員の指導が自殺の要因とした。その後、市教委は、再発防止対策検討委員会を立ち上げた。遺族から見れば議論が尽くされてなかったが、2021年3月「生徒指導ハンドブック」を公表することをもって、検討委員会を終了させた。
政治的関心が高まる「指導死」
「指導死」に関して政治的な関心が高まっている。自民党内では「こども庁」創設を求める動きがあり、党内の勉強会では、指導死について遺族から話を聞いた。また、総裁選の最中、地方議員から「要望書」が出され、その中で、学校現場で生じている問題の一例として「指導死」が挙げられた。
このほか、「提要」の改訂に合わせて、名古屋市子どもの権利擁護委員が「意見書」を9月3日に提出した。子どもの権利条約の精神にのっとり、子どもが権利の主体であること、子どもの意見が尊重されること、子どもの最善の利益を明記することを要望した。現行の提要では、子どもの権利条約の文言はない。
さらに、埼玉県内で初めての「子どもの権利条例」を検討している北本市議会も9月28日、意見書を可決した。市議会では、条例制定を検討するため「特別委員会」が設置された。教員が男子生徒になりすましてTwitterで女子生徒を誹謗中傷した事件や、市内の小学校を廃校としたときに児童の意見を聞かなかったことが問題となって、条例制定の動きが生まれた。意見書では、「不適切な指導事例」や「教師による指導が原因の一つになったと考えられる自殺」にも触れている。
遺族たちは10月16日14時から、Zoomで、指導死を含む不適切指導による児童生徒への影響に関するシンポジウムを開く予定だ。参加申し込みは「安全な生徒指導を考える会」の申し込みフォームへ。