今になってこんな機会がやってくるとは
さて、すでにチーム動画をご覧いただいた方は想像できるだろうが、冒頭のメールの1行下には続きがある。
【監督:藤井猛九段】
第2回女流ABEMAトーナメントでは、各チームに監督棋士が1人つく。今後の動画内で明かされていくかもしれないが、藤井九段は私たち3人ともにそれぞれご縁の深い棋士であり、まとめ役としてはこれ以上ないと言っても過言ではない。
その監督から連絡が来た。
「試験的にネットでフィッシャールールを指しましょう」
4人が全員集まるとなると大変だが、今はネットで対局ができる。子どもたちが寝た後、21時過ぎに練習対局をお願いした。
やや緊張しながら私が居飛車を選択すると、左から4番目に飛車を振られた。四間飛車だ。
顔が見えないネット対局だが、自然と背筋が伸びた。
藤井九段は四間飛車の大家であり、我々世代のヒーローなのだ。
長年、普段からいろいろとお世話になっているが、これが藤井九段との初対局である。まさか今になってこんな機会がやってくるなんて、巡りあわせとは不思議なものだなぁと思う。
勉強の開始時間は育児が終わる21時から
ABEMAトーナメントに出場することが決まってから、夫と1日3局フィッシャールールで指すことにした。
私たち将棋指しは、1手10秒以内に指す「10秒将棋」は身に沁み込むほど指している。だが、今回の持ち時間はかなり独特で、1手5秒以内に指さなければいけない場合もあれば、2~3分を1手に費やすこともできる。慣れるには、とりあえず数をこなさなければならない。
最初の頃は時間切れも含めて、内容もボロボロだった。
個人戦ならともかく、団体戦は私の成績がチームの結果に直結してしまう。これはまずいと思い、できる最大限の時間を将棋の勉強に費やした。
簡単に言うと、育児と仕事と勉強しかしない日々を過ごすのだが、これは文字では伝えきれない厳しさがある。勉強の開始時間は育児が終わる21時からで、夫との将棋は23時から開始した。一番の息抜きは育児中のママ友との会話で、「疲れた」と言って「おつかれー!」と返してくれるのに癒されるのだ。
選んでもらった以上は、それに応えたいと思うのが団体戦である。
何度か実際にメンバーで集まった。やはり、ネットで対局するのと実際に盤を挟むのとでは感覚が違う。将棋を指したり、気になる局面を研究したり、みんなで勉強した。
出産する前の、将棋が一番だった頃に戻ったような、懐かしい気持ちを思い出した。
藤井九段のご自宅で将棋を指した時には、奥様が手料理を振舞ってくださった。
あまりにも美味しくて「藤井先生は毎日こんなお料理を食べられていいですね」と言うと、「そうでしょ」と照れ笑いを浮かべていて、心まで温かくなった気がした。
ご視聴、そしてチーム西山の応援をしていただけたら嬉しいです。