健康的に日焼けした肌。仕立てのいいジャケットにパリッとしたシャツ。そして美しい姿勢――。本稿の写真を見ても感じるだろうが、一見、将棋指しに見えない棋士のひとりが、この中川大輔八段ではないだろうか。
一昨年には、同門の中村太地七段と『将棋棋士が最高にオシャレしたらどうなる?』というスペシャル企画で、ファッションブランド・ビームスの服に身を包んで対局したことでも話題になった。
「今日は、あのときのジャケットを着てきました」という中川八段は、おしゃれに関する逸話も多いが、登山家としても知られ、こちらの話題で注目を集めることも少なくない。
この中川大輔八段のインタビューでは、まずはファッションや登山に関するエピソードについて話していただいた。
さっそく『将棋の渡辺くん』(※)に記されている、渡辺明竜王(当時)といっしょに服を買いに行った話からお聞きしよう。
※渡辺明名人の妻である伊奈めぐみさんが描く棋士の日常を描いたコミックエッセイ。観る将入門に最適と将棋棚でも大人気で、中川八段のエピソードは第1巻に収録されている。
100万のキャッシュを持って、新宿・伊勢丹へ
――『将棋の渡辺くん』に《渡辺くんは いつもどこで服を買ってるの?》と聞き、その後に渡辺名人と服を買いに行く話が紹介されていますが、このことは覚えておられますか。
中川 よく覚えていますよ(笑)。当時、渡辺くんが竜王になったばかりで、たしか彼が20歳のときだったかな。ということはもう16年くらい前なんですね。でも、いまだにこの話のことはよく聞かれます。
――詳細を教えてください。
中川 概要は漫画に描いてあるとおり、そのまんまです。キャッシュで100万持ってきてもらってね、一緒に新宿の伊勢丹に行ったんですよ。彼の奥さんも一緒に来られてね。半日ほど伊勢丹にいましたね。
――具体的に何を買ったのですか?
中川 スーツ1着とそれに合わせるシャツとネクタイ。シャツとネクタイは組み合わせがきくよう2つずつ。そして今度、買いにいくときはそのスーツを着ていって、それに合うものを買えば、組み合わせが増えていくからと伝えてね。
――ファッション指南もされて(笑)。
中川 そう。あとはスーツがいいのにカバンがまずいとよくないでしょ。だからカバンとベルトと靴と。それと竜王になると免状書きに連盟に来たりもするので、そのとき羽織るジャケットと綿パンもね。本当に一式ですね。