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「100万円もってきて」将棋の渡辺明名人が、伊勢丹でファッション指南された20歳のころ

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中川大輔八段インタビュー #1

2021/10/22
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いちばん慣れていない人のレベルに合わせた山選び

――最近、藤森哲也五段がYouTubeチャンネル「将棋放浪記」で「中川登山研」のことを紹介されているのを拝見しましたが、山頂で料理もされるんですね。

中川 鉄板と肉の塊を冷凍して持って行くんですよ。冷凍しておくと、着く頃にほどよく溶けているんでね。それを切ってわいわい食べるんです。お酒を持って行く人もいますね。あと参加メンバーは割り箸係とかコップ係とか、いろいろ分担してやっています。

プロ棋士が集まる登山の会に潜入したら衝撃的だった(将棋放浪記【プロ棋士】より)

――ハードな登山という感じではないんですね。

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中川 そうですね。登山研では、いちばん慣れていない人のレベルに合わせた山を選んでいます。そして山頂で楽しめるようなところをね。ある程度、山慣れしてるメンバーだけだったら、もうちょっとレベルの高いところに挑戦したりもしていますが。

――山頂で将棋もされていました(笑)。

中川 藤森くんが動画を撮っていたときは、「ひふみんしょうぎ」という雑誌の付録の将棋をやりましたね。配置が特殊で小さいんだけど、みんな夢中になっていましたね(笑)。

――将棋は、必ずされるんですか?

中川 そのときの流れですかね。いつだったかな。ファミリー向けの山で、たくさんの登山者が集まっているとき将棋を指していたら、おじさんたちが見に来て「なかなか強いね」とか言っててね。「ありがとうございます」とか言いながらやったんですよ。そういうのは楽しいですね。

登山の魅力はやっぱり気分転換、ストレス解消

――中川先生が、登山を好きになったきっかけは何ですか?

中川 初めは自転車が好きだったんですよ。細いタイヤのロードレーサーで峠を越えたりするのが好きだったんですが、そのうち山が楽しくなってきた感じですかね。

 

――登山の魅力はどういったところでしょう。

中川 やっぱり気分転換、ストレス解消ですね。今思っていることとかが、歩きながら整理される。それがいいですね。下山するときには、なんとなくクリアになっている。面白くないことがあっても、降りる頃には、なんとなくスカッとしているんですよ。登山研も、いろんな人が来るけれど、彼らもいろんな悩みがあると思う。でもみんなでワイワイ騒いで肉を食べたり温泉に入ったりすると、生活に戻ったとき、また頑張ろうと思えるんじゃないかな。そこにこの登山研の価値もあると感じています。悩みを聞いてあげるとかじゃなくて、勝手にすっきりしている。そこに意味があるかなと。

――対局にもいい影響はありますか?

中川 体力が落ちると集中力が落ちてきますよね。これを支えるのが明らかに体力なんですよ。そういった体力の下支えにはなっていますよね。