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竜王になったので、ちょっといい服を着たほうがいいだろうなと

――こうやって一緒に洋服を見に行ったというのは渡辺名人だけなんですか?

中川 そうですよ。だって「100万持ってきて」といって持ってこられる若手は、なかなかいないし(笑)。

――それもそうですね(笑)。これは何かきっかけがあって、声をかけられたのでしょうか。

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中川 彼は20歳で竜王になったんですけど、本当にあっという間に強くなって、あっという間に金屏風の前に立つことになったんですよ。

――つまり竜王になられたのが、ひとつのきっかけだったと。

中川 そうですね。私はそのとき、研究会で一緒に練習将棋をやっている仲だったんですけど、普段の彼は本当に大学生のような格好でしたので。対局のときはスーツを着るとはいえ、普段のときでも「あ、竜王だ」って見られるじゃないですか。そのときあんまりだらしない格好だと、第一人者としてふさわしくないですから。

 

――そういったアドバイスを中川先生がされたのはなぜでしょうか。

中川 若い人が竜王になって注目を集めていたので、ちょっといい服を着たほうがいいだろうなと思ったんですよ。僕なら先輩だし、一緒に将棋もやってて仲もよかったので、言ってもいいだろうと。ただ19歳、20歳のときはみんなこんな感じですよ。彼は今や実績も十二分の第一人者ですからね。いつまでもこのイメージだけが先行しちゃうと思うと申し訳なくてね(笑)。

――最近の渡辺名人は、真っ黒なスーツを着て、ファッションも話題になっていますよね。

中川 食べるものも気をつけて、節制していますよね。彼は、若いころからトップを走っている棋士だけあって、自己管理も素晴らしいですよね。

将棋の渡辺くん』1巻より ©講談社/伊奈めぐみ