GAFAへの“世界的逆風”
しかし、これは第一歩に過ぎません。アップルだけでなく、GAFAと呼ばれるグーグルやフェイスブック、アマゾンといった世界を股にかける巨大プラットフォーム企業とどう向き合っていくのか。このことは、わが国の経済や社会に突きつけられている重要な課題なのです。
今回の“アップル税”問題には、私が公取委員長だった2016年2月から調査に取り組んできました。まず、経済産業省と連携を取りながら関係者への聞き取りを進めていくと、事業者がアプリを「アップストア」で販売しようとすると、逃れようのない形で手数料を徴収されることが明らかになった。これは事業者に対して不当な不利益を与えており、自由で公正な経済活動、企業間の競争を阻害してはいないか、という懸念を有するにいたったのです。
アップルと厳しい議論の応酬
公取委は、戦後の1947年に施行された独占禁止法の執行機関として設立されました。独占禁止法の最大の要諦とは、自由で公正な競争が確保される市場という環境を守ることです。アップルが「リーダーアプリ」に関して決済手段を拘束し、“アップル税”を取ることで自由で公正な競争を阻害し、不当な利益を得ているのだとすれば、それは公取委として関心を持たないわけにはいきません。公取委とアップルの間では、相当に厳しい議論の応酬が繰り広げられました。
この調査は今回の調査終了の発表にいたるまで、約5年の歳月を要しました。守秘義務等の障壁もあって、アプリ開発者などの事業者側から実態を聞き取ることに時間がかかったものと思います。アップル側も、当初は「まったく問題ないだろう」と考えていたはずです。