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なぜ日本は“アップル税”回避を引き出すことができたのか? 前公取委員長が明かす「私はGAFAとこう戦った」

2021/10/15

 米アップルは9月1日、日本の公正取引委員会による調査を受けて、2022年に全世界で規約の一部を変更することを発表しました。書籍や音楽、動画などのコンテンツを閲覧する「リーダーアプリ」について、15~30%の配信手数料を回避できるようになる規約変更をアップルが申し出たのです。「異例の譲歩」という報道もありました。

“アップル税”をめぐって「異例の譲歩」を引き出す

 iPhoneなどで使うアプリは、現状ではすべて「アップストア」からダウンロードしなくてはなりません。これまで、アプリ開発者はそこでアプリを売るために“アップル税”とも言われるような手数料を納める必要がありました。いわば“胴元”に“ショバ代”を納めることにも例えられるようなものです。今回のアップルの決定は、先述のリーダーアプリにおいて、この“アップル税”を払わずに済む、外部の決済手段への誘導(アウトリンク)を認めるというものでした。

 これを受けて、翌2日、公取委は規約改訂確認後の調査終了を発表。巨大IT企業への規制強化の動きは世界的な潮流です。日本の公取委も世界最大の企業であるアップル相手に、自由で公正な競争を制約する行為を止めさせる対応を引き出しました。これは日本のイノベーションにとって重要な一歩だと言えます。

2016年に公正取引委員会委員長に就任した杉本和行氏 ©文藝春秋

 アプリを開発する事業者にとっては、30%等の手数料がなくなることで収益改善が見込まれ、コンテンツの価格低下にもつながるでしょう。わが国でのスマートフォン出荷台数の半数近くはiPhoneが占めていますから、スマホなしの生活が難しくなっている私たち1人ひとりにも、今回の決定がもたらす影響は広く及ぶことになります。