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なぜ日本は“アップル税”回避を引き出すことができたのか? 前公取委員長が明かす「私はGAFAとこう戦った」

2021/10/15
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フェイスブックからの「不正流出」がきっかけ

 1つの転換点になったのは、「ケンブリッジ・アナリティカ事件」ではないかと思います。2016年の米国大統領選で、SNS最大手であるフェイスブックから選挙コンサルティング会社であるケンブリッジ・アナリティカに8700万人もの個人情報が不正流出したことが、2018年に発覚。それらの個人情報が世論操作に使用されたのではないかと、批判が噴出しました。

米連邦取引委員会(FTC)委員長の“アマゾン・キラー”リナ・カーン氏 ©️共同通信

 膨大な個人情報を含むデータを一手に集め、そのデータがユーザーにとって思いもよらない使途に用いられてしまった恐れがある。ケンブリッジ・アナリティカ事件は、巨大化したプラットフォーム企業の行動が危険性をはらんでいることを世に知らしめました。「フォートナイト裁判」も関心を集めました。アップストアでダウンロードができる人気ゲーム「フォートナイト」を開発したエピックゲームズが、昨年8月に“アップル税”を反トラスト法(独占禁止法)違反ではないかと訴え、その課税を回避する外部決済システムをゲーム内に導入しました。アップルはこの動きを受けて、フォートナイトをアップストアから除外したのですが、これが、世界的に議論を呼び起こしました。この件も、今回のアップルによる外部決済(アウトリンク)を認めるという決定に影響したのではないでしょうか。

人気ゲーム「フォートナイト」(公式HPより)

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 今回のアップルの問題に限らず、日本の市場や経済を守るために、巨大プラットフォーム企業といかに向き合うかを考えなくてはいけません。20世紀末に始まった経済のデジタル化は急激に日々の生活を変化させていますし、そのデジタル情報が価値を生む「データ本位制」の世界に私たちは生きているからです。