12歳で起業してから15歳になった現在までの間に、通信高校1年生の加藤路瑛さんは事業をはじめ、いろいろな挑戦を続けてきた。
中でも大きな注目を集めたのが、中学2年生だった昨年1月に設立した「感覚過敏研究所」だ。
話題になったきっかけは、新型コロナウイルスだった。マスクの着用がほぼ義務化していく中で、「感覚過敏」によってマスクを着けたくても着けられない人たちがいた。その人たちのための商品を開発、販売をして注目を集めたのだ。
感覚過敏とは、視覚や聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感の反応が人よりも敏感で、日常生活に困難を生じるようになった状態を指す。
たとえば視覚過敏であれば、スーパーの陳列棚が発する白い光で頭痛を起こしたり、吐き気を催す。聴覚が過敏だと、街中の騒音に耐えられずうずくまってしまうケースもある。敏感に反応してしまう対象は人それぞれで、一律の解決方法はない。
「かまってちゃんなの?」
個人差が大きいこともあり、社会的にはまだ広く認知されているとは言い難い。本人は深刻な苦しみを感じていても、「それくらい我慢できるでしょ」「かまってちゃんなの?」と攻撃を受けることさえあるのが現状だ。しかし感覚過敏は、本人の気持ち次第で我慢できるという類のものではない。
さらに認知度の低さゆえに、苦しんでいる本人ですら、その理由が感覚過敏であることに気づけないことも多い。
加藤さん自身は特に味覚が敏感だったが、「自分が感覚過敏だということはずっと分かりませんでした」と言う。
「僕は小学校の給食が食べられませんでした。先生からは『最低ひと口は食べなさい』『残してはいけない』と言われたのですが、頑張って食べようとしても、口に入れようとした時点で気持ち悪くなってしまうんです。給食の時間が来るのがいやで、親に何度も学校を休みたいと頼んでいました」
特定の食品が食べられないのなら対処もしやすいが、同じ食べ物でも調理法が異なると食べられなくなるなど小さな変化にも加藤さんの味覚は鋭く反応した。
「白米は食べられるんですが、炊くときの水の量が変わると食べられなかったりします。あとは、親が作ってくれた鶏の唐揚げは好きでも、冷凍食品になると食べられなかったり。プラスチックというかビニールっぽい感じがしたり、鶏肉から作る場合と質感、食感が違ったりしてしまって」