2019年本屋大賞を受賞した瀬尾まいこさんの小説をコミカライズした、マンガ『そして、バトンは渡された』の作画を手がけた田川とまたさん。現在も北見市に住んでいる田川さんに、コミカライズ制作にあたって取材した旭川の街について話を伺った。

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田川さんが撮影した旭川の街並み。コロナの影響か人通りは少なかったという。

マンガの舞台を旭川にしたのは...

――田川さんは北海道北見市在住ですが、マンガ『バトン』の舞台は旭川市にしたそうですね。なぜ旭川を選んだのでしょうか?

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田川 出身大学が旭川教育大学で、思い入れのある街なんです。前作『ひとりぼっちで恋をしてみた』では、自分が住んでいる北見市を舞台にしました。世間的に「未開の地」として扱われがちな「道東」を描ききったので、「他に思い入れがあって、まだ描いていない場所はどこか」を考えたときに旭川になりました。

 あとは、主人公の優子と森宮さんの生活している様子から、旭川くらいの規模感の街をイメージした、というのもあります。

優子の登校風景。屋外はほとんど旭川の景色を参考にしている。©文藝春秋

 僕は生まれが紋別市という蟹やホタテが獲れる港町で、中学校卒業時に引っ越して以来、ずっと北見市に住んでいます。今はみんな東京や札幌に出てしまうけれど、自分にとって一番馴染みが深いのは地方都市。今後もどこにでもある街と、そこに住んでいる人たちを描きたいと思っています。

田川さん撮影。この風景も作中で使われている。

 今回『バトン』のために旭川を取材していたら、駅前にイオンができていたんですよね。長年、駅前の中心地は「平和通買物公園」という歩行者天国だった記憶があるのですが、活気がなくなっていて。コロナの影響もあるかもしれませんが、寂しかったです。