私は女性向けのバイブレーターや生理用品の輸入販売の会社を1996年に立ち上げ、約四半世紀経営してきた。2019年には大阪の百貨店に、2021年には原宿の商業施設に店舗を構えるまでに成長させることができたが、25年前には全く考えられなかった未来を生きている。
伊勢丹新宿店でバイブレータを販売
例えば、数年前まで百貨店では生理用品を売り場に置くことはタブーとされていた。ところが今、都心部の百貨店はセクシュアルヘルスに関する商材を積極的に販売している。2021年3月には伊勢丹新宿店で初めてバイブレーターが売られ、大きな話題を呼んだ。
ブームの中心を担うのは、女性バイヤーや女性経営者だ。彼女たちと話していると、「フェムテック」は単なる経済用語ではなく、女性たちが当事者としてマーケットを構築し、広げていく流れだと実感する。女性を大きくエンパワーしているのだ。
さてフェムテックは今後、日本においてどのように発展していくのだろう。私が少し懸念しているのは、日本社会では既に、「オジサンたちのモノ」になりつつあることだ。2020年には自民党議員たちが「フェムテック振興議員連盟」をつくった。
議連を立ち上げた野田聖子氏が経済誌のインタビューに答えて「(女性のためという)きれいごとではない。経済としてフェムテックに関わりたい」と話していたが、低迷する日本経済の起爆剤としてフェムテックは経済界、政界からも期待されているようだ。
とはいえ、そこには女性たちが始めたスモールビジネスを守る視点はなく、女性=「消費者」としてしか見えていないと感じる。
現在、「フェムテック検定」を行う法人や、フェムテックの権威然とした医療関係者等の法人などが次々に設立されている。
日本から国際市場に広がる開発はゼロに等しく、具体的な商品やサービスもまだ発展途上段階にもかかわらず、フェムテックというマーケットの枠組みを規定し、既得権益をうむための組織作りが行われているのが現状だ。日本はフェムテックでもまた、ガラパゴス化の道を歩んでしまうのかもしれない。