女性の身体に対する共感やリアルな視点が欠けているためか、フェムテック議連は「吸水ショーツ」を医薬部外品にしようと提言した。
吸水ショーツは経血を吸収する下着としてフェムテックを象徴する商品と言われている。繊維テクノロジーの進化によって布だけで、ナプキン数枚分の吸収が可能になった。今や女性の生理ライフを大きく変える夢の商品として急成長している。
そこで多くのメーカーがぶちあたるのが、日本における生理用品の規制だ。
日本は生理ナプキンに他の国ではみられない厳しい規制をかけている。
使い捨てナプキンは「医薬部外品」に指定され、育毛剤と同じく“効能はうたえるが、医薬品ではない”という扱いで、製造・管理過程が行政に取り締まられる。結果、海外メーカーにはよりハードルが高く、既存の国内大手しか参入できなくなり、日本の生理用品の選択肢が狭められてきた。
生理用品への法規制は60年前に作られた。当時、決定の場に女性はいたのだろうか。厚生労働省に確認したが、生理用品が医薬部外品にされた議論の経緯は、今はもう分からないという。
日本のフェムテックに足りない「視点」
ちなみに、生理用品と全く同じ機能を持つ使い捨てオムツは「雑品」として、業界団体の自主衛生基準に基づいて流通している。雑品のため、生理用品よりも価格が抑えられる。
なぜナプキンがオムツよりも危険視されているのか、私は全く理解できないが、現在、フェムテック議連が進めているのは、この古い法律に、最先端の繊維テクノロジーをあてはめることだ。
長い間日本社会では、生理のない人たちがつくった法律、制度、ビジネスのなかに、女性の身体がむりやり押し込められてきた。女性の身体の尊厳が欠けたまま、ビジネス最優先で走るだけでは、結局女性を搾取することにしかならないだろう。
フェムテックという国際的な流れを日本において矮小化せず、実態のあるマーケットとして成長させるためにも、真のジェンダー平等を求める公平な視点が、私たちには必要だ。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』(11月8日発売)に掲載されます。