被害に遭った後、自ら命を絶った被害者も
流布されていた映像の中には、「女子中学生が拷問される姿や自傷行為を強要される映像も含まれていた」と韓国で犯罪心理学の第一人者として知られるイ・スジョン京畿大学犯罪心理学科教授は言う。
「博士ルームでは、“グルーミング”という、まだ幼い子どもたちの心理を利用して接近し手なずける方法を使って、中学生などを誘引し、身元を確認して脅迫に及び、性的搾取物を撮影していました。モデルの仕事といわれてもまだよく判断がつかない年齢です。被害に遭った後、自ら命を絶った被害者もいました。
皮肉なことですが、n番ルーム事件の後、韓国では性犯罪における被害者への理解を高めることになりました。被害者の中に未成年者が相当数いた事実が分かり、韓国社会に未成年者は絶対的に保護すべきだという認識が共有されたのです。これまでは性犯罪事件では巻き込まれた未成年者も共犯者とみなされましたが、n番ルーム事件での被害者はひとりも処罰されずに支援を受けています」
懲役42年は「厳罰に処する」という裁判所の強い意志
チョの逮捕からひと月後、検察は被害者への法律的な面からの支援に乗り出し、5月には、性的同意年齢(性行為の同意能力があるとみなされる年齢)もそれまでの13歳から16歳に引き上げられている。ちなみに同年齢は、米国では16~18歳、英国、カナダなどで16歳、ドイツは14歳となっていて、日本にいたっては13歳と低い。
チョは一審では無期懲役を求刑されたが、判決は懲役45年となり、控訴審では懲役42年に減刑された。これは、いわゆる加害者が裁判所に提出する反省文や奉仕活動などによるものだが、チョは、被害者へ脅迫も強要もしなかったとして被害者を証人として法廷に立たせることを要請したといわれ、減刑のための“加害者のための反省”だったことが分かる。イ教授は量刑についてこう説明する。
「無期懲役を宣告しても20年くらい過ぎると仮釈放の審査を受け始め、遅くとも30年くらいで釈放となります。懲役42年という無期懲役よりも軽いと思う人もいるようですが、チョ・ジュビンの犯行は組織的にルームを運営していた性犯罪であったという点から、裁判所が無期という曖昧な刑罰ではなく、厳罰に処するという強い意志を表したものだと思います」