ちょっと入院するだけだよ
清水 そうなんだよ。お母さんは、あなたとお兄ちゃんが大きくなったのを見たいんだよ。
娘 わかっているよ~。
清水 そのためには、手術をするのが一番よさそうなんだ。
娘 入院決定だね。
清水 まあ、ちょっと入院するだけだよ。
娘 どのぐらい入院するの?
旦那 それはちょっとわからないな。手術の方法にもよるのよ。1週間で済むかもしれないし、もしかしたら、1カ月ぐらいかかるかもしれないし。
清水 1年はない?
旦那 全然ない、ない。そんなこと絶対ない。今はわりと早いから大丈夫よ。
娘が少し安心したような顔をして自分の部屋に行くと、旦那が不思議なことを言い出しました。
口述筆記で代表作を書けばいい
旦那 あなたはこれまで、売れる本をたくさん作ってきたけど、代表作と言える本はまだ書いてないと思う。だから、これから書けばいいんじゃないの? 「清水ちなみ? ああ、あの本を書いた人だね」っていう代表作を。いままであなたは、自分のことをほとんど書いてないんだから、一冊は書いておかないとね。ああ、これを書くために私がいたんだな、と思う本を書けばいい。書けると思うよ。「私とは何?」と「人とは何?」を同時に探すような本を。たぶん、すごく多くの人に受け容れられる本になると思う。
清水 だといいけどね。これでボケちゃってたら話にならないもんね。そうしたら口述筆記して。
旦那 だから録音してるんだよ(笑)。
清水 そうか。タイトルはね、『天国への階段』っていうんだ。
旦那 だから、元気になったらいっぱいしゃべればいい。
清水 そうしたら(パソコンの)画面を見なくて済むしね。
旦那 そうそう。テープレコーダーだから、そんなに負担がかからないし。
清水 そうだよね。私、しゃべるのは得意なんだよ。そのために講演とかいっぱいあったのかもね。
旦那 うん。
多分、旦那は私を励ましてくれたんだろうと思います。
こんな話をした翌12月4日の午前中、私は大学病院に行き、「手術を受けたい」と脳外科の担当の先生に言いました。
すると先生は意外なことに、「今夜、手術しちゃいましょうか?」と言って、私は血管内手術(コイル法)を受けました。
しかし、手術箇所とは別のところに大きな脳梗塞が広がってしまったこともあって、私は丸3日間、脳を休めるために鎮静剤で眠らされました。