くも膜下出血の手術前日、これから書く〝代表作〟のためにと言って、旦那は私との会話を録音し始めていた。(全12回の12回目/#1、#2、#3、#4、#5、#6、#7、#8、#9、#10、#11より続く)
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小2の娘は「死んじゃうわけ?」
どこか弱々しい声で話す私に、学校が終わって帰って来た、当時小学校2年生の娘が聞きました。
娘 入院するの?
旦那 うん。でも、治るための手術だから。このまま放っておくと大変なことになっちゃうから。
娘 手術には失敗もあるの?
旦那 うん。そういうこともある。
娘 そうしたら、お母さんは死んじゃうわけ?
旦那 最悪の場合はね。
清水 道端を歩いてても、クルマが突っ込んでくるかもしれないでしょ。同じだよ。
旦那 このまま何もしない方が、お母さんが死んじゃう可能性が高くなっちゃう。だから、今ここで手術しておきましょうねという話なんだよ。
清水 たぶん大丈夫だと思う。
旦那 うん。たぶん大丈夫。
娘 手術が?
旦那 うん。手術したほうがいいと思う、お父さんも。
リスクはあるけど、うまくいかないこともある
娘 じゃあ、手術決定でしょうか。
旦那 お母さんが手術を受けたいと言ってるから決定だね。手術したら、しばらくは入院になるけど。
娘 どのくらい?
旦那 わからない。
清水 お母さんのアタマはツルツルに剃っちゃうんじゃないかな。
旦那 いや、まだわからない。コイルだったら、剃らなくても大丈夫だと思う。
以前にも書きましたが、くも膜下出血の手術には2種類あって、ひとつは開頭して患部を小さなクリップでパチンと留めてしまうクリッピング法。この場合は髪の毛を剃らなくてはなりません。
もうひとつは血管内手術(コイル法)です。足の付け根の動脈から、レントゲンの画像を見ながら心臓を経由して脳の患部まで、延々と管を通していきます。管が脳動脈瘤まで届くと、形状記憶合金のプラチナを毛糸玉のように押し込んで患部をふさぎます。
コイル法の場合は開頭しないので、頭髪を剃る必要はありません。
清水 大丈夫よ。リスクはあるけど、リスクというか、うまくいかないこともある、というぐらい。
娘 うまくいかない可能性は?
旦那 それはわからない。
娘 失敗するかも。
旦那 2割くらいかな。
娘 2割って何%?
旦那 20%。
娘 そんなにあるの?
旦那 でも、手術しなければ、今度脳内出血したら、ほぼ確実に死んじゃう。嫌だろ。死なないためなんだよ。君が大きくなるのをお母さんに見てほしいでしょ。
娘 うん。