昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

“何も見えない! ” 幼い娘を乗せて運転中に目に異変が…OL委員会・清水ちなみが語る「絶対絶命の瞬間」

「OL委員会」の人気コラムニストが忽然と姿を消した理由 #5

2020/12/24

 これは目がおかしくなったのか、奇跡なのか。あの世に左脳の4分の1を置いてくることで、私には驚くべき変化がいろいろあったのです。(全6回の5回目/#1#2#3#4より続く)

◆ ◆ ◆

娘の保育園まで運転中に異変が

 11年前、46歳の時にくも膜下出血で倒れた私は、手術後に脳梗塞を起こして左脳の4分の1を失いました。話すこと、書くこと、計算することが難しくなり、視野は大きく欠け、右手はうまく使えません。右半身全体の動きも鈍くなりました。

清水ちなみさん ©Ichisei Hiramatsu

 くも膜下出血を起こした原因は、血圧の異常な高さ。小さい頃からずっと低血圧だったのに、2番目の子どもを妊娠して以降、血圧がどんどん上がり、230近くになりました。

 初めて身体の異変を感じたのは、2007年11月。くも膜下出血で倒れる2年前です。すでに私の血圧は200を超えていて、かがんで靴紐を結ぶのもつらくなっていました。

 朝、下の娘を保育園に送っていくためにクルマを運転していた時のことです。いきなり、私の体の何かが弾けたような気がしました。

 クルマは真っすぐ進んでいます。道順も完璧にわかっています。でも、目を開けているのに、何も見えません。必死という言葉は、こういう時に使うのでしょうね。私が本当の意味で必死だったのは、幼稚園の時に溺れかけたのと、この時だけです。

 幸い、かすかな視野を頼りに、保育園には無事に着くことができたので、先生には「帰りは、私ではなく、他の人が迎えにきます」と伝えました。

最新話は「週刊文春WOMAN」2021 創刊2周年記念号に掲載中

 運が悪いことに、旦那はアメリカ出張に出かけたばかり。まだ成田空港にいる頃です。電話をかけたところで出張を中止にできるはずもなく、出張の間中ずっと心配をかけるだけ。そう思って、黙っていることに決めました。 

 さしあたっての問題は、保育園の近くになんとか駐めたクルマです。保育園の先生は忙しく、保護者も同様です。友達に頼もうか、それとも専門の業者を呼ぼうか。いろいろ考えましたが、とりあえず、自分の状態を確かめてみることにしました。

 目は全然見えないということはなく、2メートルくらいまでは普通に見える。でも、その先がぼんやりしています。たとえるのが難しいのですが、ど近眼という感じでしょうか。結局、いつも通っている道でもあり、緊張しながら、そろりそろりとなんとか運転して帰りました。