「MRI(核磁気共鳴画像法)を撮りましょう」と言われて、子どもとふたりで待っていると、義母が来てくれました。旦那のお母さんです。近所の眼科で「大学病院に行け」と言われた時点で、電話をかけておいたのです。本当にありがたかった。これで子どもふたりは、とりあえず家に帰ることができます。
下の子のいる保育園の名前や場所を説明しようとすると、義母は「大丈夫よ。保育園の場所はお兄ちゃんが知っているでしょ? お迎えに行ってふたりに何か食べさせてタクシーで家に帰るから心配しないで。都合がいいときに連絡してちょうだい」。
ホッとしました。義母におまかせすれば安心だと思いました。
まもなく、私は生まれて初めてMRIを撮りました。読者の方々も、テレビで見たことがあるかもしれませんね。強い磁石を使う大きな装置で、身体を輪切りにした映像を撮るのです。
まず横になり、頭にヘルメットみたいなものを装着。撮影中、大きな機械音がするので耳栓をします。万が一に備えて緊急停止ボタンを持たされて準備完了。やがて私は、装置の中にするするっと自動で吸い込まれていきました。サンダーバードに乗り込む時のようです。
検査をするも、原因は…
機械が動いている間はビービー、カンカン、家の新築工事みたいな音がずっと響いています。20~30分くらいだったでしょうか。検査結果はすぐに出ました。
異常なし。
では、私の目は?
「MRIに映らないものがあるかもしれないので、とりあえず外来でまた来てください」
タクシーで自宅に戻り、義母に帰ってもらったのは夜の9時頃。まもなく旦那から「無事にアメリカに着いたよ」と電話がありました。
病院に行ったことを私が黙っていたので、子どもたちからは「どうして目が見えないってお父さんに言わないの?」と聞かれました。
「アメリカは遠いし、心配をかけるだけだからね」
こうして私の長い一日が終わりました。
その後、大学病院には2回か3回通いましたが、お医者さまが言うことはいつも同じでした。
・寄り目は時間が経てば自然と治る。
・眼帯をつけるなら右、左と交互につけること。
・血圧を下げる薬を飲むこと。
自分でも理由がわかりませんが、当時の私は、どうしても降圧剤を飲みたくなかった。かたくなに拒んでいたんです。