旦那 そっか。でも、看護婦さんが悪いわけじゃないよ。問題はあなたにある(笑)。
清水 うふふふ。
こうやってゲラゲラ笑っていれば大丈夫よ
旦那 何言ってもわかってもらえなくて、イヤになっちゃったなあって感じ?
清水 うん。
旦那 私が言ってることをあなたが理解してるのは伝わってくるんだけど、あなたが言ってることがまわりの人には理解できないのよ。まだもうちょっと時間がかかる。あなたはおしゃべりで、聞いてもらうことが大好きだから、不満な気持ちは理解できるけどね。でも、不満な時に「不満だ!」って顔をするからおもしろいね。
清水 (うなずく)
旦那 あっ、うなずいてるね。大丈夫、だんだんわかるようになるから。こうやってゲラゲラ笑っていれば大丈夫よ。笑ってるうちに、脳味噌のいろんなところががんばってくれて、だんだんみんなに話が通じるようになるから。それまで休んでいればいいのよ。子供たちに何か伝言はある?
清水 お母さんは、その、お母さんは、その、学校の……。
旦那 あっ、学校。うん、すごいじゃない。
清水 コウサンが。
旦那 コウサン? うーん、コウサンか……。
清水 うん。
旦那 コウサンって何?
清水 うーん、わかんないんだ。
旦那 わかんないんだ。
清水 何だっけ?
旦那 「何だっけ」って、初めて言ったね。すごいじゃない! 「お母さん」と「わかんない」のほかに、「大丈夫だよ」とか、「何だっけ」とか言えるようになってきたね。
今も生きているので、ただただ感謝
清水 うん。でも、お母さんがお母さんはわかんないでしょ。
旦那 うーん。何だろう?
清水 わかんないからさー。そのー、コウサンは、コウサンは、うんとー、わかんないからねえ。
旦那 コウサンって何?
清水 ええと、お母さんはわからないからお母さんわかんないもんね。
旦那 全然わからない(笑)。
清水 わかんないでしょ。
こんなに全然しゃべれなかったんですねえ。おそらく「学校の先生」って言いたかったのかな?
昔の話みたいに思えますが、でも、今は病気やその他で、言葉を失われた人の気持ちがちょっとだけわかるような気がします。
しかし、人生の一大事でした。
人の一生は神のみぞ知るですが、脳梗塞は再発率が高く、1年で10パーセント、10年で50パーセント再発するといわれています。手術から11年が経ち、今も生きているので、ただただ感謝です。
※最新話は発売中の「週刊文春WOMAN 2021年 秋号」にて掲載。
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