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日本の就職試験は不毛な過程が重視される? 採用において「面接」が精度の低い選考方法である“決定的証拠”

『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』より #1

note

採用する側もされる側も十分に注意すべき

(4)認識の相対性

「絶対音感」と言って、音に対する絶対的基準を自分の中に持っていて、どんな音を聞いても音階がわかるという人がいます。しかし、絶対音感を持っている人はとても少なく、多くの人は基本的に「相対音感」、つまり何かの音と別の音を比べた時にどちらが高いか低いかだけがわかるという人がほとんどです。同じように、人を見る場合、誰かと比較するとどちらの方が自社に合っているのかわかったりする(もしくはわかった気になる)のですが、1人だけを見た場合、その人がどれほど自社に合っているのかを評価するのは途端に難しくなります。これは1人の人の中での各性格特性間でも似たようなものがあると思われ、強み弱みのはっきりしている人の性格は認識しやすいものの、バランスの取れた人に対しては、「この人はこういう人」と表現しにくい場合があります。学業成績は全方位的に努力をしないと高得点が取れませんので、まさにバランスの取れた人である可能性も高そうですが、そうすると「特徴のないふつうの人」だと評価されてしまうかもしれません。

(5)ハロー効果

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 ある対象を評価するときに、目立ちやすい特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のことを「ハロー効果」(“halo”=「後光」効果)といいます。「体育会の大会で全国優勝をした」「面白いイベントを立ち上げて、数千人を動員した」など、目立つエピソードを聞いてしまうと、本来、採用基準にはあまり関係ないことであったとしても、その他のすべての要素が良く見えてしまうことがあります。逆に、学業のような地味に思われがちなものでは、ハロー効果はあまり発揮されないかもしれません。そうすると、派手なエピソードを持っている人よりも相対的に低い評価を得る可能性があります。

 以上は採用面接に関わる代表的な心理的バイアスで、面接の精度を下げている原因ではないかと思います。しかも、各項目で例示したように、どの心理的バイアスも、特に成績の良い人に対しては良い方向に向かない可能性があります。もし読者が採用する側なら、このような心理的バイアスには十分注意して、落とすべきでない人を落とさないようにしましょう。もし読者が採用される側なら、このような誤解をされる可能性があることを知って、自己アピールの仕方を工夫してみましょう。

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日本の就職試験は不毛な過程が重視される? 採用において「面接」が精度の低い選考方法である“決定的証拠”

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