採用選考にあたって必ず行われると言っても過言ではない「面接」。しかし、近年の研究では、「面接」で高く評価された人が、実際に仕事を行う際に高い成果を出すかどうかの関連性は低いというデータが発見された。なぜ「面接」では、正当な評価ができないのだろうか。
ここでは、大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(DSS)代表の辻田一朗氏、人材研究所代表取締役社長の曽和利光氏の共著『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか』(星海社新書)の一部を抜粋。精度が低い日本の企業面接の実態を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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「面接至上主義」の崩壊
日本の企業の採用選考においては、大昔から「面接」(インタビュー)が重視されています。現在でもそれは変わりません。今でも面接をせずに内定を出す企業はほとんどありません。その背景には面接というものが、他の選考方法と比べて、候補者の人となり、性格や能力を評価するのに、最適な手法であるという採用する側の信念があります。能力試験や実技試験、性格適性検査、グループワークなどいろいろな選考手法がありますが、顔を付き合わせて話をする面接(最近ではオンラインでの実施もふつうのことになりましたが)が最もブレることなく、その人の評価ができると信じ込んでいるのです。
しかし、採用選考に関する世界の研究をみると、その信念は間違っている可能性が高いことがわかります。下の図をご覧ください。
これは、さまざまな採用選考手法について、その妥当性を検討した研究の一覧です。妥当性とは「その選考手法によって高く評価された人が実際に仕事を行う際に高い成果を出すか」ということです。なお、表の妥当性係数は高い方が「妥当性が高い」とされています。
認知的能力テストとはSPIの能力適性検査などのようなものです。ワークサンプルとは、実際にやってもらう予定の仕事をやってもらうということなので、いわゆるインターンシップと言ってよいでしょう。シチュエーショナルジャッジメントとはケーススタディ、アセスメントセンターとは仕事のシミュレーションのようなものと考えてください。
その詳細は特にここでは触れませんが、最も注目すべき事実は、これらのさまざまな選考のうち、なんと「非構造的面接」の妥当性が最も低いということです。「非構造的面接」とは、「候補者ごとに違った質問をして反応を見る」ということなので、これが通常の企業で行われている面接です。つまり「面接」は最も精度が低い選考方法だったのです。
「構造的面接」(構造化面接ともいう)では、高い妥当性を示していますが、これは「マニュアル化された面接」(質問内容やテーマ、回答方法、収集情報、評価方法などを明確にルール化して行う面接)のことで、これをしている企業は現時点では一部の先進的な企業を除いてはほとんどありませんので、今回は触れません。ただ、現在、多くの企業が構造的面接の導入を検討し始めてはいますので、将来的には改善されるかもしれません。