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G1勝利は一つだけ…それでも種牡馬として大活躍

 この時、ステイゴールドの国際クラシフィケーション値(編集部注:国際的に取り決められた競走馬の格付け)は120。他の出走メンバーを圧していたため、1番人気の支持を受ける。ステイゴールドの性質を熟知している日本のファンは、期待半分というより不安の方が大きかったのではないか。ゆったりした流れをマイペースで追走しながら、勝負どころから離され気味になっても、中山競馬場のターフビジョン前に集まったファンに、特に大きな反応はなかったからだ。それが残り200mの地点から、エンジンに点火したかのように急激に加速。驚異的な追い上げを見せると一完歩毎に場内がヒートアップ。粘り込みを図るエクラールをアタマ差捉えてフィニッシュすると、大きな拍手が沸き上がった。この勝利は日本で生産され、日本で調教された馬の、海外での初めてのG1勝利となったが、確かに競馬場内でのパブリックビューで、こうまで盛り上がった例はそれまでなかったように思う。50戦目のラストランでの初G1制覇。大団円の象徴として、また“晩成”の極みとして、記憶されるレースになった。

 しかし、ステイゴールドの“晩成”の個性は、実はそこで終わることはなかった。種牡馬として産駒が05年にデビューすると、初年度から4頭が重賞勝ちし、06年デビュー組からドリームジャーニー、08年デビューのナカヤマフェスタ、そして11年には牡馬クラシック三冠を達成するオルフェーヴルが登場。翌12年のゴールドシップも含めて、15年2月に急逝するまでG1馬を連続して輩出。まさに死の直前まで“晩成”型の性質は貫かれた。

 G1勝利が一つだけ。そのためJRA顕彰馬として表彰されることはないのかもしれないが、個性派の評価としては、それも際物的でない正当(?)な意味で言うならば、ステイゴールドは間違いなくトップレベルの超個性派である。

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(執筆・和田章郎)

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