大一番で発揮する勝負根性、相手なりにしか走れない脆さ
4歳時の戦績が特徴的なのは、G2よりもG1の方がパフォーマンスが優れている、ということだ。小柄な牡馬が大一番で発揮する勝負根性、だけど相手なりにしか走れない善戦マン的な脆さ、の同居。秘めた性能が高ければ高いほど、もどかしさを感じさせる個性はファンの目に魅力的に映る。キャリアを積んで本格化しさえすれば…。ところが、5歳になってからも特に変化は見られない。いや、日経賞から宝塚記念までの上半期の5戦が3・5・3・3・3着だから、善戦マンというより、善戦止まり。むしろ勝負弱さを感じさせる。秋初戦の京都大賞典で6着に敗れ、秋の天皇賞は12番人気の低評価。しかし、何とここで一世一代のパフォーマンスを見せる。レコードでG1・3勝目を挙げるスペシャルウィークと、ゴール前まで叩き合ってクビ差の2着。ファンにはたまったものではない。
そして今度こそ、今度こそ、と思わせつつの6歳。年明けから4連敗と相変わらず負け続けるが、春の終わりの目黒記念。ここで1番人気に応えて重賞初制覇を遂げる。デビューから実に38戦目。ここにきて“晩成”の個性が改めて強調されたが、逆にこの後、馬券の対象になることなく6歳時を終えることになる。小柄な馬体で気持ちで走り抜けてきた馬、重賞制覇で燃え尽きたのではないか? そんな声すら聞こえてきたものだ。
そんなファンの思いを笑い飛ばすように、7歳初戦に日経新春杯を快勝すると、ドバイシーマCを連勝。いよいよ晩成の血が開花する時が来たかと思われたが、左にモタれるという悪癖が顕著になって、京都大賞典1着入線後の失格を含めて4連敗。翌年に種牡馬入りすることが決まっており、ラストランとして選ばれたのが香港ヴァーズだった。