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中田久美前監督が初めて語った日本女子バレー「正セッター問題」《五輪後初インタビュー》

田代、宮下、佐藤、籾井…代表セッターをめぐる苦悩 中田久美独占インタビュー #3

2021/10/23

source : 文藝春秋

genre : スポーツ, 社会

中田 東京チャレンジマッチで、籾井選手で行けると確信したのでその3週間後から始まったVNLでは、17戦中15戦で籾井を使いました。東京五輪でコートに立たせるためです。

「世界に勝つためのトスワークが彼女の標準値になる」

――籾井選手の成長は日本女子バレーのエンジンになるでしょうか。

中田 セッターは国内リーグで正セッターとして何度か優勝を経験し代表に選出され、そこから国際大会の経験を何年か積み、オリンピックを迎えるという流れが理想だとは思いますが、コロナの影響もあり国際試合で試す機会がなかったので、そこは不運だったと思います。VNLとオリンピックの違いも私自身が経験していますから、そう簡単ではないことは承知の上で起用しました。

 オリンピックでの経験が籾井選手の今後のバレーボールに対する座標軸となれば、世界に勝つためのトスワークが彼女の標準値になると思います。

VNLの健闘と、東京五輪の苦杯

――それにしてもVNLの戦い方は見事でした。中田さんはこんなバレーを目指していたのかと腹落ちしました。選手全員がスピード溢れる動きで、攻撃は常に3枚か4枚。相手のブロックが完成する前に攻撃に転じていた。VNLで流れるようなバレーを見せられただけに、東京五輪の戦いにはもやもやしたものが残りました。

中田 VNLはイタリアのリミニで5週間バブル方式で行われたのですが、戦い方やメンバー構成は国によってまちまちでした。ほとんどの国がコロナ禍で国際大会ができなかったこともあり、五輪前の最後の大会とあって、出場国はみな本気モード。五輪に参加しないチームは早々に若手を起用したチームもありましたけど、五輪参加チームは五輪の選考がかかっているので選手はどこの国もギラギラしていた。

中田JAPAN ©JMPA

 そんな中、日本は若手中心の布陣を組みました。まだ、その時点で五輪が本当に開催されるかどうかも不確実でしたし、もしかしたらこれが最後の国際大会になる可能性もゼロではない状況でした。一方で本番が近づく中で選手達のメンタルも揺れ動く。ここは若手選手を積極的に起用し勢いを大事にしながらチームを固めようと。

主将・荒木の「足りないのは成功体験」発言を知り…

中田 以前に、荒木選手が雑誌のインタビューか何かで「このチームに足りないのは成功体験」と発言しているのを知り、なるほどね……と。2021シーズンは荒木選手にもキャプテンとしてVNLにも参加してもらい、選考もかかってきますのでオリンピックに向けたシミュレーションも踏まえ、サイドの選手はある程度固定し戦い抜こうという方針を立てていました。

 若い選手の勢いは一旦走りだすと止まらない。中国やトルコ、ロシアなど強豪国を次々破り、12勝3敗で決勝ラウンドに進みました。ただ、決勝ラウンドではやはり相手の底力と負けられないという気迫に押し切られ、4位という結果に終わりました。