西野 先天的な要素もある早漏に対して、重度の遅漏は後天的なものと言えますね。
小堀 だから、予防することができます。この場合の予防は、マスクをするとかワクチンを接種するとかではなく、原因、危険因子を知って、こちらから近づかないようにすること。
一般の生活習慣病でも、高血圧気味だったら塩分を控えるし、血糖値が心配ならば、運動を心掛けたり食事のカロリーを減らしたりするでしょう。それと同じで、「危険なオナニー」を控えることが、最良の予防法であり、治療法でもあるわけです。
とはいえ、言うは易しで、生活習慣病も多くの場合これといった自覚症状がないまま進行していき、発病の瞬間を特定することは困難なのも事実です。
西野 自覚症状が出たときには、治療が大変になっていたりするわけですよね。「性活習慣病」の場合は、原因が10代とかの若い頃にあるから、なおさら予防するというのが難しいかもしれません。
小堀 だからこそ、「性活習慣」に関する啓発がとても大事になるのですよ。
射精は一日にして成らず
西野 先生は、具体的にはどのような啓発が必要だとお考えですか?
小堀 まず、「床オナはやめよう」というのを、社会の共通認識にしないといけない。これは、後々苦しい思いをしている幾多の患者さんの姿を目にしてきた医者の痛切な思い、願いです。
西野 危険因子を取り除くうえで、「床オナ禁止!」というのは、非常に分かりやすいメッセージです。そこから、「どうして?」という話にも、持っていきやすいのではないでしょうか。
小堀 啓発の仕方について言えば、私は学校現場できちんとした「男子性教育」を行う、その中で「オナニーのやり方」「不適切なオナニーの悪影響」までしっかり教える、というのがベストだと思っています。今は、地方の教育委員会や学校の方針によって、バラバラなのですが。
西野 TENGAが世界18ヵ国の男女を対象に行った調査では、日本人のマスターベーションの初体験年齢は、平均14.6歳で一番早かった。年々「早熟化」が進んでいることも分かりました。ところが、「10代の頃、マスターベーションに関する性教育を受けたことがある」と答えた人は、わずか12%で、ロシアと並んで最下位という結果だったんですね。
小堀 その「矛盾」は、どうにかしなくてはいけません。
あらためて申し上げれば、勃起は誰に教わらなくても始まる「生理現象」です。しかし、射精は違う。多くの男性は、「適切なオナニー」を経て、女性の膣でちゃんとイケるから自覚がないだけで、実は射精には正しい知識と訓練が必要なのです。