TENGAヘルスケアの調査によると、20~70代男性で、「膣内では射精できない」~「半分程度の頻度で射精できない」と答えた人が、全体の5.8%に上ることがわかった。これを同世代の男性人口に当てはめると、およそ270万人もの日本人が射精に悩んでいるという計算になる。
男性はもちろん女性も悩むことの多い「射精」に関する問題は、どのように解決できるのだろう。ここでは、性に関するさまざまな専門家たちの知見をまとめた『なぜオナニーはうしろめたいのか』(星海社新書)を抜粋。TENGAヘルスケアで広報を務める西野芙美氏と、膣内射精障害を防止する第一歩として「床オナ(編集部注:床や布団にこすりつけて行う自慰行為)はやめよう!」と提唱する尿器科医の小堀善友氏が行ったオンライン講義の一部を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
◆◆◆
早漏は、脳の病。遅漏は、「性活習慣病」
西野 男性も女性も苦しんでいる膣内射精障害の「知られざる現実」を中心にお話をうかがってきましたが、悲劇を生まないためには、何が必要なのでしょうか?
小堀 あらためて問題をクリアにするために、こんな話をしてみたいと思います。射精障害には、早漏と遅漏があるとお話ししました。
西野 膣に挿入後、「すぐにイッてしまう」のと、「なかなかイケない」という真逆の原因ですね。
小堀 でも、その根本原因に関して言うと、「早漏の反対が遅漏」という関係にはなく、まったく別の病態である、というのが私の持論なのです。
西野 そこも、多くの人は誤解しているのではないでしょうか。
小堀 早漏には、脳内で分泌されるセロトニンという神経伝達物質が関与していると考えられています。セロトニンは、不足するとうつ病の原因になるとされる物質なのですが、早漏も引き起こすんですよ。そういうメカニズムなので、抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が、早漏にも「効く」のです。
西野 うつと早漏は、ある意味で隣り合わせの症状だったんですね。
小堀 「勃起は、リラックスした状態でないとしにくい」という話を思い出してください。やはり勃起と射精は、精神状態に大きな影響を受けるということなのだと思います。
さて、問題の遅漏、それも膣内射精障害という重度の遅漏ですが、こちらは多くの場合、あえてセックスの「性」の字をあてた「性活習慣病」だと言えます。思春期からの「性活」、具体的にはオナニーのやり方を間違ったために、大きな悩みを抱えることになってしまった。