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 さきほど『強くなるための方法』についてお話ししましたが、今後は、ソフトを使っていかに強くなるか……その方法を独自に研究することが重要になってくるし、そこに才能が顕われるのだと思います。

 それは将棋ソフト開発の世界についても思いますね。技術的な工夫が見たい。お金で速度を競うことに才能は感じないので。

──……いや、感動しました。確かにおっしゃる通りです。

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阿部:
 この点はぜひ強調しておいていただきたいです。今回は開発者の方々のお話がメインになるとは思うんですが、これだけは……。

 ま、これは私ではなく『ドラえもん』の言葉なんですけどね!


 最後の言葉を、阿部はニヤリと笑いながら口にした。
 ディープラーニング系の著しい伸長によって、大きな変革期が訪れている。今回の長時間マッチでは、それが改めて実証されたように思う。
 結果だけを見れば引き分けだったが、山岡や加納の話を聞けば、dlshogiがもっと強くなることは疑う余地がない。
 さらに今回の長時間マッチが興行的にも成功を収めたことで、新たな開発者たちが参入することも予想される。
 その影響は、プロ棋界へと波及するだろう。間違いなく。

 だが、阿部のような棋士が育成や普及の現場にいてくれるのであればきっと、人類は道具を正しく使うことができる。
 山岡が望むような形で。きっと。

(了)

第一譜『水匠』杉村達也の挑戦
第二譜『dlshogi』山岡忠夫の信念
第三譜『GCT』加納邦彦の自信
第四譜『プロ棋士』阿部健治郎の未来予測