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阿部:
 悪いことばかりではありません。たとえば内閣府が公開している『ムーンショット型研究開発制度』の目標 によると、2050年までに人が身体・脳・空間・時間の制約から解放された社会を実現するとあります。

※内閣府 ムーンショット目標1 2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現

──2050年!?

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阿部:
 国策通りなら、2050年までに人間の能力を拡張できるようになるので、山岡さんの願いは叶います。

 理論上、2050年の3歳児は、2021年のトップ棋士に大駒を落として勝つことが、棋力的に可能になるということです。つまり強くなりたければ長生きして、科学技術の恩恵を得ることです。

──30年後ならまだ私も生きていますね……今のうちに、3歳でタイトルを獲る将棋のラノベを書いておかないといけないかもしれません(苦笑)。しかし私なら笑い話で済みますが、実際に将棋界で戦っている棋士の先生方にとっては、こうした技術の進歩は……やはり恐怖なのでは?

阿部:
 私は地方出身で、都会の人々と比べたら圧倒的に人間と指していない。山形で長く普及に携わってこられた指導棋士の土岐田先生から教わるということはありましたが、それに依存するということはなかった。だから割り切れるということもあると思います。うん。割り切れない人もいるんでしょうね。

──プロ棋士の方々って、一般論として……開発者たちのことをどう思ってるんでしょう?

阿部:
 いや、よく思ってない人もいるんじゃないですか(笑)。

──ははは!

阿部:
 私は地方出身者で、恩恵を受けてるほうですから、そうは思いませんが(笑)。

──CSAの人って、学者先生だったり研究者だったり、肩書きがあって固いイメージがあるじゃないですか。でも電竜戦は、本当に趣味の集まりですからね。正体不明の連中に人生を振り回されている感覚が(笑)。

阿部:
 CSAの瀧澤会長には、大山康晴賞を授与して、連盟もその功績をたたえているわけですが……。