永瀬さんなんかはそうだと思うんです。ひたすら最新型を勉強して、将棋に時間を投資する。それでいいんですよ。それが合理的ですから。
──しかし阿部先生のような、地方出身で、最新型を勉強するどころか将棋を指す相手にも困るような少年もいるわけじゃないですか。仮に阿部先生が今、修行時代に戻ったとしたら……現在の環境はプラスだと思われますか?
阿部:
そこがまさに経済力の問題なんです。お金を持っていれば地方でもそんなに苦にならないんですが……お金がなくて地方だと、私の時代よりも悲惨なんですよ。
東京都の平均年収って600万円台ですけど、山形県って300万円台なんですよね。しかも移動費がかかる。さらに私の頃は5%だった消費税が10%になっていて……挑戦する人にとって重荷になっている。
地方からプロになるのは、私が通っていた17年くらい前より、もっとリスキーで難しい行為になっていますよね。
──そこは親の経済力次第という感じですね。
阿部:
さらに今後は、子供の学力も必要になってくると思いますよ。英語が読めなければソフトの設定もできない。あの非常に長い設定書を理解するためには国語力も必要でしょう。
──プログラミングが棋士に必須になるとしたら、数学力も必要ですね。
阿部:
総合的な学力が必要になってますよね。藤井二冠の時代はまだ過渡期で、そこまで求められてはいなかったと思うんですが。
プログラミングも義務教育で必修になりましたから、いずれは自分の作ったソフトで研究する子も出てくるでしょう。谷合さんはもう作っているんでしょうが。
──dlshogiの山岡さんは、自分のソフトが人間の能力を拡張するような形で使ってもらえたら嬉しいと話しておられます。山岡さんは音程を調べるアプリも作っていて、それを使えば絶対音感がない人でも、同じように演奏や作曲ができると。dlshogiも同じように使うことはできるんでしょうか?