──阿部先生と同世代のプロ棋士の方々は、ソフトに対してみなさん先生と同じような感触を持っていらっしゃるんでしょうか?
阿部:
このコロナ禍で加速した感じはしますね。みんなソフトを使うし、使い方も考え方も同じような感じになってきていると思います。
──使用方法に関する共通認識ができてきている?
阿部:
藤井二冠や千田さんは、自動対局など、より高度な使い方をしているかもしれませんが……だいたいの棋士は検討に使うくらいじゃないんでしょうか。
ソフトと感想戦をやってるような感じですよね。アナログ的な使い方をするのが、ほとんどだと思うんです。
──ソフトが示す手順や評価値を暗記していたり?
阿部:
そういう若手は多いでしょうね。ただ、そういった情報は覆るじゃないですか。
──ですよね! 不安はないんですか?
阿部:
千田さんとも以前、そういった話をしたことがあります。『地道にアップデートしていくしかないよね』となったんですが……今だと、1年間にソフトのレートが50くらい上がるかどうかだから、そんなに変わらないからいいんですけど――
技術が大幅に進歩する瞬間……今回のディープラーニング系がそうですけど、1年でレーティングが500とか変わってしまうと、地道な努力が全部無駄になるんです。
その時、どうなるのかなと思うんですけど……。
けどそうなったら先行者利益が消えて、今まで将棋を知らなかった人も一から定跡を憶えることができるので、それはそれでいいことなんだろうなと(笑)。
──大富豪の革命みたいなことが起こると。
阿部:
将棋って先行者利益が大きいゲームだったんですよ。棋士が定跡を作っていたんですが、そういう知識がない人にとっては厳しかったんです。いや、さすがに1年で定跡が全部変わっちゃうのはヤバいと思うんですけど(苦笑)。
けど2~3年で定跡が一新されるのは、スピード感があっていいのかもしれないですね。私が言うのも変かもしれませんが、新たに入ってくる人々にとっては。