──水匠の受け方が、ですね。
阿部:
ええ。40手目に5五角と打ってdlshogiが猛攻するんですが、そこからの受け方がすごく勉強になって……これはいいものを見たな、と思いましたね。
──dlshogiの4九銀に関しては、リアルタイムで阿部先生も佐々木先生も相当興奮なさっておられました。
阿部:
この局面だけを見れば、4九銀を打てる人もいるでしょう。棋士なら見えると思います。けれどずっと前からこれが見えているのがすごい。
読みが深すぎる。そこからの応酬もすごい。1手で1歩を稼ぐようなところもあって……いやぁ、これはすごいですよ! 息をのむ攻防ですよね。
──こういった高度な応酬は、棋士の参考になるものなのですか?
阿部:
ここまで来ると鑑賞の域に達しているんですよね(笑)。
もちろん参考になる部分というのもあって、たとえば43手目の5六歩からの……角打ちを促して、53手目に5五角と打つとか。このあたりは部分的な定跡として参考にできそうですよね。私の力であっても。
けどそこからは神業的で……ちょっと真似できないですね。
──参考になりそうな部分を、1局の将棋から探すというのが……。
阿部:
そう! そこが勉強になるんです。1局の中から参考にできそうな部分を切り出して、吸収すると。それが棋譜並べの面白さじゃないかと思うんですよ。
──この第2局は、千日手を水匠が打開して勝ちましたが、あの千日手の部分はいかがでしたか?
阿部:
2九飛車のところですね。人間の目だと『さすがに先手が打開する順があるんだろう』と思いますね。
──人間の目から見ると、パッと打開できるとわかるんですね。
阿部:
仮に千日手にするとしても、まず飛車を2九飛としておいて、それでも何ともならなかったら千日手を選ぶという感じになると思うんですよ。
──この1局に関しては、水匠の強さを感じたのか、dlshogiの強さを感じたのか、どちらだったでしょう?