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どんな道具も使う人次第。技術的な工夫が見たい

──今回の長時間マッチのことを、プロ棋士と話したりはなさいましたか?

阿部:
 いや。最近は私も棋士との付き合いが減ってきていますし……数人と『面白かったね。バグが出たりして』みたいな話はしましたが。

──バグのことが話題になっちゃってるんですね(笑)。じゃあ、バグについてお尋ねします。このバグが検討中に出現したことはありましたか?

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阿部:
 それはありますし、そのスクリーンショットを……半年くらい前に、杉村さんに送ったんですよ。で、磯崎さんに相談してもらって。でも再現性がないから、GUIを変えてみたら? みたいなことを言われた気がします。

──『やっぱりバグだったんだ!』とわかったときは、どう思われましたか? 今までの研究が無駄になってしまったり……。

阿部:
 いえ。再現性もありませんし、出現すればすぐにわかるバグですから、研究には影響ないです。それに棋士はみんな一度は遭遇してるので。

──阿部先生は、研究家揃いの西村門下じゃないですか。

阿部:
 はい。

──藤井猛先生のように、ソフトで研究はしないと公言しておられたり。地方出身で、自分の力で研究してきた方々からすると、ソフトの指し手や思考を暗記するような方法で勝つというのは、どんな感じがするんでしょう?

阿部:
 資本主義が、行き着くところまで来てしまったということですね。仕方がないんですよ。世界中の天才が、投資された潤沢な資金を使って、コンピュータを発展させていっている。それを子供でも使えるような時代が来てしまったわけですから。

 トーナメントプレーヤーとして見たら、それでいいんです。けど、普及の面から見ると……危ういですよね。

──危うい? それは、どういう点で?

阿部:
 最近も私にこんな相談が来ました。『トップ棋士は高いパソコンを使って、ディープラーニングのソフトを動かして研究しているけど、支部ではどんなふうに子供に将棋を教えたらいいんだろう?』と。