阿部:
なるほど。触れてる時間が長ければ、そうなるでしょうね。
将棋は触れている時間が長くないと、どうにもならない世界です。今回の観戦記もそうですし、定跡書とか将棋世界を読んでも強くなれる。基本的に質が低い情報がないのが今の将棋界です。
そういう世界だと、触れている時間が長ければ長いほど強くなる。何でもいいんです。ただ自分の棋風を改造するということであれば、本を読むよりも、dlshogiに1日8時間くらい触れていた方がいい。
間違いなく伸びると思いますよ。私がもし、地方で指す人がいなくて、インターネットとソフトだけは使えるとしたら、絶対にそれを使いますよ。
開発者の方々が何十年も開発を続けてきたものが、無料で使えてしまうなんて、本当にすごいことですよ! 積極的に使うべきなんですよ。ただ……。
──ただ?
阿部:
人には向き、不向きがあります。私も10年以上、指導対局をしてきましたから、人と指さないと強くなれないタイプの子供がいることは知っています。今までは、そういう子のほうが時代に合っていましたが……。
──コミュニケーション能力が高い子は、情報を集めやすかった。けれどコロナ禍で対面できない状況だと、他の才能が重要になってくるというわけですね。
阿部:
時代によって強くなる方法が変わるのは、そういうものなんですよね。コロナが終わったらまた、変わるわけですから。
──しかし……大部分のプロ棋士は、従来通りの方法で強くなってきたわけじゃないですか。引退まであと30~40年くらい将棋を指し続けるとして、簡単に『仕方がない』と割り切れるものなんですか?
阿部:
私は淡々と、客観的に見ています。10年前からわかっていたことですから。私はSF漫画とかが好きで、たとえば手塚治虫の『火の鳥』の未来編とか。そんな時代が遂に来たかと。コロナによって時計の針が早く進んだ感じですね。
──まさに『評価値ディストピア』な世界が……。