阿部:
水匠ですね。終盤はCPUのほうがまだ強いと言われていますが、実際に強いと感じました。
私の手元には、今回杉村さんが使用したのとほぼ同じCPUがあって、それを動かして検討していたんですが――
人間が1手動かすと、それで一気に優勢になったりするんです。コンピュータには見えない1手を入力すると。だから人間の直感もまだ捨てたものじゃないと思いました。
──ええ!? 人間が教えてあげるんですか?
阿部:
これはTSECのときも実際にありました。ソフト同士の対局では千日手になったんですが、私が示した手を入力すると、優勢になるんです。その手が見えないと千日手になってしまうというのが、実際にあったんですね。
今回のように持ち時間が長い将棋であっても、人間なら『もっと時間を使った方がいいんじゃ?』という局面でもソフトは時間を使わなかったりするんです。このへんは、ちょっとわからないですね。
自分でもソフトで検討させて思ったのですが、長時間の場合は人間とソフトがタッグを組むというのが、現状では最も強くなるのではないかと思いました。
長時間マッチ第3局:ディープラーニング系の棋譜は地道に積み重ねていくような将棋
──では第3局について。この将棋は……。
阿部:
あれ夜中だったから、あんまり将棋を憶えていないんですよ(苦笑)。
──そうなんですよ……みんな雑談に夢中でしたし。
阿部:
手数は183手と長かったですが、勝負が決まるのは早かったので、私はずっと質問を読み上げていた記憶があります。
──dlshogiが序盤から評価値を積み上げていって、勝ったと。これがディープラーニング系の勝ちパターンだそうです。
阿部:
TSECで解説させていただいたこともあって、最近ディープラーニング系の棋譜をたくさん見るようになったんですが……地味なんですよ。地道に地道に積み重ねていくような将棋です。
──地味。
阿部:
正直に言って、ソフトが強すぎて私には理解できない部分が多いです。