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「女の子の好きなこと=恋愛」ではなくなってきた

 少年漫画は、もともと読者層の幅が広かったのですが、最近では少女漫画のなかにも、年齢や性別にとらわれない作品が増えてきました。競技かるたを題材とした末次由紀先生の『ちはやふる』(講談社、2007年~)や、鎌倉を舞台に家族の絆を描いた吉田秋生先生の『海街diary』(小学館、2006~18年)などは、男性のあいだでも人気があり、アニメ化や映像化によって予想しなかったファン層を獲得しています。

 なぜ、幅広い層から人気を得られる少女漫画が増えたのか。その理由としては、「少女漫画と言ったら恋愛もの」というセオリーが崩れてきたことが挙げられます。現代の女性たちは、昔のように「恋愛」に重きを置かなくなりました。もっと言えば、「女の子の好きなこと=恋愛」ではなくなってきたのです。

 大ヒットした2014年公開のディズニー映画『アナと雪の女王』を見ても、モチーフは恋愛ではなく「姉妹の絆」で、構造としては『鬼滅の刃』の兄と妹の関係と似ています。大事な存在を描くとき、今の読者には恋人ではなく、親子やきょうだいなど別の関係で描いたほうが伝わりやすいのかもしれません。おそらく、そこには社会の変容や女性自身の意識の変化が大きく関係しているのだと思います。

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 現代の女性が自身のライフステージを思い描くとき、「まず恋愛があり、その後、結婚・出産して家族をつくる」という昭和にありがちな幻想を抱いている人は、今の時代おそらくほとんど存在しません。ましてや、「そうした人生こそが正しい」などと考えている人など、もはやどこにもいないと思います。

 振り返ると、1970~80年代は「恋愛」の価値が非常に高く、「恋愛こそ崇高なもの」というイメージがありました。当然ながら表現者たちがつくる漫画などのコンテンツも、そうした時流に沿う作品が多かったです。

 しかし21世紀になり、世の中には「恋愛に対して不器用な人」や「恋愛に向いていない人」が大勢いるということが理解されてきました。そうした人たちが、「恋愛以外をテーマにした作品を読みたい」と欲したことで、少女漫画の多様性が広がったのだと思います。