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拓銀破綻の教訓と金融庁の警鐘

 日銀のマイナス金利は劇薬に違いない。貸し出し利ざやと運用利回りの縮小で、大手行5グループ中4社と、上場する地銀の約8割は17年3月期決算が最終減益となった。生き残りをかけた地銀は都道府県や系列の垣根を越えた再編を進めるが、リスクの高い有価証券や不動産向け融資を増やしており、金融庁が監視を強めている。

森信親・金融庁長官 ©白澤正/文藝春秋

 金融庁はバブル崩壊後の拓銀などの破綻について「将来、不動産価格が回復するという希望的観測に頼り、必要な対応に遅れをとった」と総括する。この教訓から、とりわけ現在の地域金融機関には「(マイナス金利など)望ましくないシナリオが顕在化する場合でも、健全性を維持する業務運営が重要だ」と警鐘を鳴らす。

 拓銀破綻から20年。政府・日銀が金融政策を誤れば、不動産や株式で再びバブルが起き、金融機関が疲弊するかつての悪夢が繰り返されないとも限らない。マイナス金利下で収益悪化に悩む金融機関も、再び不良債権を抱えるようなリスクの高いビジネスに手を染めるべきでない。それが拓銀が残した教訓だろう。

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