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レンタカーの保険は「自己負担ゼロ」ではない

 一般的に、レンタカーの車両代金には保険料が含まれているが、これは「入っておけば事故を起こしても支払いがゼロになる」というものではない。先の年配男性のケースにおいても、客側がこの点を理解していなかったために、補償額をめぐるトラブルに発展したという。

「その人は保険の免責やNOC(ノンオペレーションチャージ)の補償には入っていなかったので、7万円くらいの支払いが発生してしまいました。免責やNOCは重要事項ですので、あらかじめ必ず説明するんですが、『詐欺じゃないか』みたいに激怒され、説得するのが大変でした」

 レンタカーの保険は、通常の自動車保険と同様に、スタンダードな補償プランでは「免責分」が規定されており、事故を起こした際には5万円程度の自己負担が生じる。

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 さらに、車両が事故により貸し出し不能になった場合の休業補償として、NOCという制度が用意されている。一般的に、自走可能な状態で2万円、自走不能な状態だと5万円程度の支払い義務が発生することになる。

 レンタカーを借りる際には、こうした免責分やNOCを補償するオプションプランも選択できる。両方をカバーするプランに加入してはじめて、万が一の際にも「自己負担ゼロ」になるわけだが、オプション料金を嫌って選択しない客も少なくないという。

「全部をカバーするプランでも1日あたり1,500円程度なので、加入をおすすめするんですが、いらないって言われることも結構あります。事故を起こしてから『やっぱり加入したい』とか、『そんなの聞いてない』とか言われたこともあります。いっそ強制加入にしてほしいですね」

 確かに、免責分とNOCという二段階の自己負担システムは、借りる側にとって親切とは言いがたい。実際に、国民生活センターのWebサイト(「レンタカー、カーシェアのトラブルに注意-事前に保険等の契約条件、車体の傷等を念入りに確認しましょう-」)では「レンタカー契約における保険や補償制度の複雑さ」が指摘されており、消費者への注意喚起とともに、業界に対して周知を徹底するよう呼びかけている。

 レンタカーを借りる側は「客」ではあるが、高額な車両を扱う責任、ドライバーとしての責任を免れるわけではない。契約内容を把握し、万が一の場合に適切な行動が取れるようにしておく必要がある。