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吉見 いえ、なかったです。だって、1回しか褒められたことないんですよ。11年のCSの1度だけで、しかも直接言われたわけでもない。ヒーローインタビューで「就任してから吉見のこんな良いピッチングを見たのは初めてでした」と言っているのを聞いただけ。

©文藝春秋

 あとは褒められるというか、「僕のこと、嫌いなのかな?」と思うぐらい(笑)。他の選手にも同じような感じだったので、選手はみんなそれぞれ、「自分は嫌われているのかな?」と思っていたでしょうね。

キャンプでブルペンの岩瀬仁紀投手に視線を向ける落合博満監督 ©文藝春秋

――選手としてはやりやすいものですか? やりにくいものですか?

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吉見 入団して数年は、そもそも接点がないので、やりやすい、やりにくいと感じることもないんです。監督といっても“ただいるだけ”って感じでしたね。「また言ってるわ」というぐらいでした。

「この人はよく喋る人なんだ」訪れた気づきのとき

――吉見さんの中でそんな落合監督の印象に変化があったのは、いつ頃でしょう?

吉見 落合さんと食事会場で一緒にごはんを食べるようになって、「この人はよく喋る人なんだ」と気づいた頃ですね。

 ほとんど野球の話で、「俺はこうやっていた」とか「昔の選手はこうだった」とか、自慢話のようにも聞こえるんですけど、お酒も入ってますし、説教でもないので嫌味にならない。

「俺はピッチャーじゃないからわかんないけどな」と言いつつ、「俺だったらこう投げられたら打ちにくい」などとバッティングのメカニズムや心理的な面についてもお話ししてくれました。その話がすごく面白くて、さすが三冠王を3度も獲った人、いつもベンチから見てるだけじゃないんだな、と(笑)。

現役時代は三冠王に三度輝いた選手・落合博満 ©文藝春秋

 気がつけば、先発の前の日でも気にならないぐらい、楽しみだったし、勉強になりました。荒木(雅博)さんや森野(将彦)さんも楽しみにして聞きに来られていましたね。監督付広報の松永(幸男/現・編成部長)さんがいて、ときどき信子さんもいて。