「あそこに投げておけば全部アウトになる」
――落合塾のような感じですね。
吉見 そうそう、僕の中では財産です。普段、話の中で特定の選手の名前は出ないんですけど、唯一、名前が出たのがヤクルトの青木(宣親)さん。「青木は○○に投げておけば全部アウトになるよ」と。青木さんは現役なので詳しくは言えないんですけど、その通りに投げたら本当に抑えられたんですよ。
――すごい。
吉見 それ以来、「抑えられるときはこうだな」「抑えられないときはこうだな」とバッターの雰囲気が見えるようになり、洞察力や観察力が大事だと思うようになりました。
そう思えたのは10年頃で、ちょうど僕も自分の中でモデルチェンジをして、「速いボールを投げたい」という欲が消えたからだと思います。「頭が良くないと野球はやっていけない」と思うようになって、よく人を見るようになりました。落合さんからもそういうことを言われたと思います。
――吉見さん自身の変化と、落合さんの言葉を聞くタイミングが合致したんですね。
吉見 そうだと思います。落合さんだけではなく、いろいろな人の言葉に対して、自分からアンテナを張って一言一句、キャッチするようになりました。
――落合さんの言葉って、自分から聞きに行かないといけないものなんですか?
吉見 ユニフォームを着ているときの落合さんはまったく話してくれません。他人みたいに扱われます。そもそも、みんなに何か話すことがないので、自分から行かないと話もしてくれないんです。
――ミーティングで選手に話をすることはなかったんですか?
吉見 ミーティングに出たことないんじゃないですかね。キャンプ初日のミーティングで少し喋るぐらいで、それもすごく簡潔なものでした。人づてに聞いたのですが、落合さんは「プロは結果の世界」と考えられていたようで、朝まで飲んでいてもいいから結果を出せ、と。あとは何も言わないんです。僕はそれが当たり前だと思っていましたし、やりにくいと感じたことはありませんでしたね。